『読みたいことを、書けばいい。』田中泰延  もう「文章術の本」は買わない!

『読みたいことを、書けばいい。』田中泰延  もう「文章術の本」は買わない!

わが家の蔵書で、「ダイエット本軍」に匹敵する勢力を誇るのが「文章術本軍」

 

ダイエット本以上に買う前の審査が難しく、買って読んだものの、想像以上にハウツー感が強くてガッカリした本も少なくありません。

読んだときは「ほうほう!」「なるほど!」と思ったのに、数日経つとその感動も薄れ、読んだことすら忘れてしまうようなー。

あ、これは私自身の問題かもしれませんが、とにかく結構な数の「文章の書き方」や「文章術の本」を読み、私なりの結論も得ていたわけです。

 

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「もう、文章術の本は買わんでいい」

そう思っていたはずなのに、恐ろしいことに引き寄せられるように買ってしまった文章本がコレ。

 

 

結論を先に申し上げますと、

 

買ってよかった! 読んでよかった!

 

そして、もう、ホントに、今度こそ「もう文章術の本は買わんでいい」と思いました。

 

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『読みたいことを、書けばいい』は、どんな本?

この本は、「なにを書くのか」「だれに書くのか」「どう書くのか」「なぜ書くのか」の4章で構成されています。

 

「高齢者向けか!?」と思うほど文字が大きく、空白も多く、俗にいう「読みやすそうな本」です。

序章に「大切なことは文字が少ないこと」と太文字で書いてある通り、文字量もかなり少ない、まぎれもない「読みやすそうな本」です。

 

が、「めんどくさい人っぽい言い回し」が多いので、そういう文章が苦手な人にとっては「読みにくい本」かもしれません。(ちなみに私は大好物です)

 

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で、肝心のこの本の主旨は、

 

”偉いと思われたい。お金が欲しい。成功したい。目的意識があることは結構だが、その考え方で書くと、結局人に読んでもらえない文章ができあがってしまう。<中略>この本は、そのような無益な文章術や空虚な目標に向かう生き方よりも、書くことの本来の楽しさと、ちょっとのめんどくささを、あなたに知ってもらいたいという気持ちで書かれた。<本文より引用>”

 

つまり、この本は、文章の書き方を手取り足取り教えてくれるハウツー本ではなく、書くことで成功しよう!と煽るビジネス本や自己啓発本でもありません。

 

よくある文章術の本との違い

私は書くことの悩みが尽きません。
特にブログやSNSで文章を書き始めてからは、「なにをー」「だれにー」「どうー」書くのかがますますわからなくなっています。

 

著者、田中泰延さんは、ネットで読まれている文章の9割は「随筆」で、「随筆」を「事象と心象が交わるところに生まれる文章」と定義しています。

 

そして、

”人間は、事象を見聞きして、それに対して思ったこと考えたことを書きたいし、また読みたいものである。”

と。

 

「定義」とか、わざわざ小難しく書かれているようですが、この本がただの文章本ではない特徴のひとつがココです。

言葉の定義をハッキリさせることー。

そこがあいまいだと、読む人に意味を伝えることはできないと明言しています。

 

「簡単な言葉を使え」「小学生でもわかる文章を書け」というハウツー文章本との違いが明らかです。

 

さらに、

・ターゲットを想定しなくていい
・だれかがもう書いているなら読み手でいよう

といった主張は、巷にあふれる文章術と真逆のもの。

パラパラと立ち読みして目に入ったこの見出しこそが、私をこの本の購入に走らせたのです。

 

”読み手など想像して書かなくていい。その文章を最初に読むのは、間違いなく自分だ。自分が読んで面白くなければ、書くこと自体が無駄になる”

 

「読みたいこと」のレベルが違う!?

「自分が面白いと思うことを書けばいいんだよ」と、よくいる「ちょっとどうなんだろう?」と思わせるブロガーみたいな主張ですが、この本の言わんとするところはもっと深いもの。

 

この本はただ面白いと思うこと、書きたいことを書けばいいとは言ってません。

書くべきは「事象と心象が交わるところに生まれる文章」です。

 

事象と心象のバランスがむずかしい

私はこのブログで「映画レビュー」を書いています。

どんな映画なのか、キャストやストーリーの紹介に続けて、「自分がどう見たか」「どう思ったか」を書くー、つまり映画そのものや映画を見たという「事象」に対して、その映画をどう思ったかという「心象」を書いているのですが、このバランスが難しいと感じています。

 

「あらすじ」ばっかりになっては「自分が書く意味」がないし、かといって「おもしろかったです」「感動しました」「涙がとまりません」的な感想ばかりではバカっぽい。

事象と心象のバランスに関して、本書の指南するところはこうです。

 

”事象とは、つねに人間の外部にあるものであり、心象を語るためには事象の強度が不可欠なのだ”

 

おそらく、心象を熱く語るほどの事象(私の場合は映画)の理解や情報を有していますか?足りてないんじゃない? ということでしょう。

そして、調べることの重要性、しかも「一次資料をあたれ」ということを結構な分量で解説しています。

 

さらに「巨人の肩に乗る」視点を持つことー。

先人が著作や作品をふまえて、「その先」や「発展」を描かなければ書く意味がないと言います。

 

「一次資料をあたれ」とか「巨人の肩に乗る」とか、これは読み書きに対する相当のバックグラウンドと覚悟がないと到達できないガチの文章指南ですよって。

 

「自分が読みたいと思うこと」は書く人によってさまざまです。

この本の著者のようにものすごい読書量(本書で紹介されている「書くために読むといい本」は、私がこれまで見た同様の紹介の中でもトップクラスの重量級です)の人の「読みたい」と、ネットの簡単な文章しか読まない人の「読みたい」には大きな開きがあるはずです。

 

「面白いと思うこと、書きたいことを書けばいい」をそのままにうけとってしまう人にとっては、この本の主張が、一貫性がないとか、矛盾していると思われるのでしょう(Amazonのレビューにもそうした意見が散見されます)。

 

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書くことの「本質」をついたこれ以上の文章術本はないと思う

『読みたいことを、書けばいい』というタイトル、加えて『人生が変わるシンプルな文章術』というサブタイトル、大きな文字で少ない文字数、少々ウザイ言い回しー、どれをとっても「読みたいことを書けばいいんだから、書くことは簡単ですよ」と言ってるように思えます。

 

が、そうじゃないんです。

この本には「書くことは生き方の問題である。」と、もはやスピリチュアルまがいの「魂の教え」もあるほど、書くことは難儀なことだということを思い知らされます。

 

私は自分の「書きたい」「読みたい」がよくわからなくなっていたところに、「読者の想定」とか「検索されやすさ」といった要素も加わって、ますます「書くこと」がわからなくなっていました。

 

が、この本は書くことの難しさと面白さに、もう一度向き合う気持ちを起こさせてくれます。

 

面白く、簡単なフリをして、苦行に引き込む「究極の文章術の本」です

 

これがあれば「もう文章術の本は買わんでいい!」 ぜひ!

 

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