2020年6月10日
少し前に新聞で読んだ「ネガティブ・ケイパビリティ」という概念を解説した本『ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力』(帚木蓬生著・朝日新聞出版)を読んだ。
新聞では新型コロナウイルスに関連して、不用意な断定がはびこる裏側には「わかりたい」という人間本来の欲求があり、それが「自分の考えは正しいと確認したい」「自分は正しい考えの側にいると認められたい」という思いを生み出し、「わからない」が許されない社会を作っている、と解説されていた。いま必要なのは、中途半端な知識や意味付けで結論を出そうとせず、「わからない」という不確かで宙ぶらりんな状態に耐えられる力(=ネガティブケイパビリティ)ではないか、と。
著者は精神科医でもある作家の帚木蓬生氏。
このネガティブ・ケイパビリティを社会生活にどう活かすか、という期待というか、この手の本はそういうもんだろうと思いこんで読み始めたのだけれど、意外な内容にビックリした。
ネガティブ・ケイパビリティの概念を生み出したのは詩人のキーツであり、この概念はシェイクスピアや紫式部の作品作りに見て取れるという。結構な分量で解説されている『源氏物語』のくだりに「あれ、これなんの本だっけ?」と思ってしまったけれど、そうか。
こうやって自分は何かの答えを求めていることに気づかされた。
「活かしたい」「役立てたい」は、「分かりたい」「分かった」のさらに先にあるもの。やたらとそれを求める自分は「ネガティブ・ケイパビリティ」が足りないんだろうな、と実感。
映画『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』(C)2018 FOCUS FEATURES LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
映画『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』を鑑賞。
この映画はスコットランド女王のメアリー・スチュアートが主人公。
血縁関係も婚姻関係も宗教関係もややこしいことこの上ないけれど、『エリザベス』、『エリザベス ゴールデン・エイジ』でおおかたのことを理解しているので存分に楽しめた(細部が歴史に忠実かどうかよりも、ザックリとした前後関係を知っておくって大事)
生後わずか6日で王位について以後、さまざまな政略に翻弄される生涯で、恋多き美しき女王といわれたメアリー。そのイメージ通りに凛とした気品あるメアリーをシアーシャ・ローナンが好演。
一方、結婚しない、子どもを持たない苦悩の抱え、メアリーへの嫉妬や天然痘の痕を白塗りで隠す女性としてのエリザベスを演じたのはマーゴット・ロビー。派手め役柄の印象が強いマーゴットだけれど、この映画の抑えた演技はお見事。
玄関にツバメがやってきて、いつの間にかそれなりの巣が完成している。
けれども日中はツバメはいないし、夜になって帰ってくるのは1羽のみ。巣に入らず、離れたところから巣を見守るようにしている。このツバメはオスなのか。家を作って彼女(奥さん)を迎えようとしているけれど誰も来ないということなのか。
頑張れ、ツバメ。