人の話を聞くときに、よく頷く人がいます。
「あなたの話をちゃんときいてますよー」という意思表示なのだろうけど、少々やりすぎてしまう人も多い。特におばさんに。
こうしたおばさんのことを「頷きすぎるおばさん」と呼ぶのはストレート過ぎるし、「赤べこおばさん」「ヘッドバンギングおばさん」「バブルヘッドおばさん」というのもなんなので、「ウナズキスト」を命名しました。
なぜおばさんは「ウナズキスト」になるのでしょうか。「ウナズキスト」に遭遇したらどうすればいいのでしょうか。そして、人の話を聞くときにはどう頷けばいいのでしょうか。
おばさんなぜ「ウナズキスト」になるのか
仕事関連の研修会や講習会に行くと、講師の話に激しく頷く「ウナズキスト」が必ず一人はいました。特に管理職が集まる場では、あちこちで「頷き」が発生します。妙な波動でも生むのか、頷きが頷きを呼び、会場中が ”頷き祭り” と化すことも。
「頷き」行動は、「あなたの話をちゃんと聞いていますよー」という意思表示です。
仕事柄、人の話をしっかり聞くことが求められるため「頷き」を多用し、話を聞いていますよとアピールする。さらに「いいお話ですねー」「私もそう思っておりました!」という共感の気持ちを示す場合もあります。さらに「さすがでございますっ!」「感銘を受けまくりましたー」という若干のヨイショの「頷き」もあります。
「ウナズキスト」たちがこれをどう使い分けているのかはわかりませんが、共通して言えることは「気持ちの表明」です。「ウナズキスト」は「自分の思いを伝えたい」と思っている人々なのです。
おばさんがウナズキスト化してしまうのは、あんなにしゃべりまくっていても、そのうえまだ伝えたい何かがあるからなのでしょう。ウナズキストの「頷く」は、聞く姿勢ではなく、隙あらば話し始めるためのウォーミングアップなのです。
「ウナズキスト」に遭遇したらどうする?

ウナズキストの段階
遠く離れたところであればどんだけ頷こうともかまいません。首がもげるほど好きなだけ頷くがよいー、のです。
が、自分のそばで激しい頷き行動を繰り返されると結構モヤモヤする。平たく言うと邪魔。
私の長年の研究によると、ウナズキストたちの主行動である「頷き」には、3つの段階があることがわかりました。
レベル1 無言の頷き
まずは軽く無言で頷く。首の振りもさほど大きくはない。
「ウナズキスト」以外の人も行う普通の頷きですが、「ウナズキスト」がこの段階にとどまることはなく、身体が温まりしだい次の段階に進みます。
レベル2 小声を漏らしながらの頷き
次の段階に入ると、「そうそう」「うんうん」「あるある」「わかる~」などの小声を漏らしだす。中には話し手の言葉を反芻するように繰り返す人もいる。
「そうよ、みんなで、みんなの協力がなくちゃ、世の中全体が、ね」といった妙にポジティブな独り言を言いながら頷くようになります。
レベル3 周囲を巻き込んでの頷き
いよいよ仕上がってくると「そうよ、ね、そうですよね。わかります? ね、ありますよね、こういうこと」と知り合いであろうがなかろうがお構いなしに周囲の人を巻き込み始めます。
私のように、話を聞いているのかいないのか自分でもよくわからない人間をも巻き込む威力がある「ハイパーウナズキスト」となるのです。
「ウナズキスト」への対処法
こうした段階を経てパワーアップするウナズキストに不幸にも遭遇してしまったらどうすればいいのでしょうか。
まず、レベル1であれば無視でOKです。
できれば自分自身が不用意に頷くことを控え、「わたしはウナズキストではありませんよ」を静かにアピールしておきましょう。
で、ヤツらがレベル2に突入すると、こちらも臨戦態勢に入ります。
「うんうん」や「そうそう」という「ウナズキスト」の声に反応を見せてみましょう。「舌打ち」「咳払い」「鼻で笑う」といった微小な反逆行動のほか、「ガン見する」というのも相手を黙らす効果があります。
が、残念ながら効果は一瞬です。
「ウナズキスト」の本質は「人に思いを伝えたいのっ!」という純真なものであるため、「迷惑かけちゃったわ」と思うことはありません。
そしてレベル3「ハイパーウナズキスト」には、基本的には打つ手はありません。
「そうそう、ね、ありますよねー」と激しく同意を求められたときに普通の人ができることといったら、返事とも笑いともつかない「戸惑い」を示すことくらいでしょう。
幾度となく「ハイパーウナズキスト」の餌食になってきた私は「完全無視」や「渾身のガン見」で応戦したこともありますが、いずれも全く効果はありませんでした。
なぜなら、ハイパーウナズキストたちは次のレベル「第4形態=最終形態」への進化を始めているからー。
ウナズキストの最終形態とは

平成最後の夏、私はついに「ハイパーウナズキスト」の最終形態を確認しました。
ハイパーウナズキストが進化すると、ついに「頷き」をかなぐり捨て「語りだす」のです。しかも、壇上の話し手に向かって。
「そうそう、そうです!私も○○だって言われて、もう感謝の言葉しかありませんでした」
「ホントにそう思います。すごく感銘を受けました」
と、まだ話の途中なのに己の感想をぶち込んでいきます。
もう「頷き」ではない。しゃしゃり出です。「ウナズキスト」の最終形態は、「シャシャリデアン」となるのです。
人の話を聞くときにはどう頷けばいいのか
とはいえ、人の話を聞くときにまったく頷きもしない、反応もしないということは、聞き手にとっても話し手にとっても気持ちが悪いものです。自分が話をする場に立つと聞き手の反応は手に取るようにわかります。大勢の前で話をするときに、頷いてくれたりウケて笑ってくれたりする反応はとても嬉しいものです。
が、一方で「無反応」というのも意外と伝わってきます。これは自分の話がつまんねぇということなので、しかたがないのですが。
ウナズキストは、こうした話し手への配慮によって「頷き」行動をしているのかもしれません。
しかし、話し手が話しやすい雰囲気を作ることや話したいことを引き出そうとする心遣いには「自分がリードしよう」「自分がコントロールしたい」という意識が潜んでいます。
つまり、話し手に気を遣う人ほど「ウナズキスト」や「シャシャリデアン」になりやすいのではないでしょうか。
また、やたらと頷かれるのも気持ちが悪いものです。特に1対1で話しているときにガンガン頷かれると「コイツ聞いてないな」「聞き流してるな」と思えてきます。
人の話を聞くときには軽く頷けばいいのです。それもホントに「そうそう」と思ったときだけ。いちいち小声を漏らす必要はありません。
みなさま、頷きすぎにご注意を。