自宅にある未読の本、本屋や図書館で気になる本、新聞の広告欄にある新刊や話題の本。
これらの本を読み果せる(おおせる)のか心配ではありますが、ふと、いつまで今のペースで本が読めるのだろうか、ということも気になり始めました。
年をとると視力や集中力が低下して本を読むのが億劫になってしまう。やがては「本から何かを得る」という発想自体を失ってしまうかもしれないし「本?ナニソレ?」となってしまうかもしれない。なんだかとても淋しい話だけれど、だからこそ限りある「時間」と「力」をムダにしたくないなと。
年をとると、どんな本を読みたいと思うのだろう
80歳を過ぎた男性の方が「年をとって本を読めなくなったことがツラい」と言っていました。そこに置いてある本でさえ自分でとりに行くことができない。目も悪くなってしまって、どんな眼鏡をかけても文字がちゃんと見えない。「昔好きだった本をもう一度読みたいんだけど」と。
若い頃から小説やノンフィクションなどたくさんの本を読み、中には何度も読んだ本があるといいます。あらすじは覚えているけど、読むたびに新しい発見があったり、以前読んだときには思いもしなかった気持ちになったり。
そんなふうにして本を読むことを楽しんできたそうな。私が例えば80歳になったとき、どんな本を読みたいと思うのだろう。この方と同じように、かつてワクワクして読んだ小説や、時代を象徴する事件や出来事をあつかったノンフィクションを読みたくなるのかな。
ネットの「高齢者に人気の本ランキング」に違和感

ネットで高齢者が読んでいる本のランキングを見ると、「老後をどう過ごすか」をテーマとした、暮らしやお金の本が数多く並んでいます。
ネットの高齢者には50歳代、60歳代も含まれているのでこうなるのも仕方がないのですが、「老後」「お金」「終活」「お墓」といったキーワードが並ぶランキングに、「年をとったら本なんて読まないよね、読めないよね」と言われているようでガッカリしてしまいます。
けれども図書館に行くと、オーバー70歳と思しき方々もたくさん見かけますし、いや、むしろ多い。実用書や文学、専門書など、さまざまなコーナーに高齢読者がいるのです。
高齢者におすすめの「歌集」
歳をとって長い文章を読むのは難しくなっても、短文の歌集なら読めそうです。与謝野晶子や北原白秋など、歌で昔を思い出したり、いろんな気持ちが沸き起ったりー。高齢者の情緒にうったえかける歌集はいかがでしょうか。
本が読めなくなったら、読んでもらえばいい?
いまや、あらゆる機器がしゃべる時代です。本の読み上げアプリもあれば、古い日本文学を朗読した動画を探すこともできます。私が高齢者になる30年後には、これらの機能はもっと身近なものになっているでしょう。
ですが、文字を読むことと、音声を聞くことには大きな違いがあります。
機械の声の質や言葉の抑揚、読むスピードなどは、自分が読むことで培ってきたものとは異なります。慣れてしまえばなんてこともないのでしょうが、もうしばらくは「本はやっぱり自分で読みたい」にこだわっていたいと思うのです。
「読みたい本があれば、私が読んでお手伝いしましょうか」と、件の高齢男性に申し出てみたところ、
「うーん……、いま読みたいのは、そこに届いている冊子のー」
その方の専門だった地質学の論文かなにかで、専門用語やら英語やらで、私では到底読みこなせるものではありませんでした。
年をとって読みたいと思う本は、それまで「どんな本を読んできたか」や、もっといえば「どう生きてきたか」と深くつながっているのでしょうね。
◆もっと本が読みたい!