『ハッ!とさせるための「文章力」入門』 宮川俊彦  文章を多元的に読む

『ハッ!とさせるための「文章力」入門』 宮川俊彦  文章を多元的に読む

『ハッ!とさせるための「文章力」入門』は、誰もが知っている童話やマンガを題材に、「どう読むか」を指南した文章表現の本です。

 

本書では、卒論やレポート、企画書など画一的になりがちな文章を「ハッ!」とさせるものにするためには、なんらかの論理が必要と説いています。

で、その論理は文章を多元的に読むことによって鍛えられ、筆者はこれを「ランダムシンキング」と呼んでいます。

 

対象(問題現象、読むべき対象としてのお話、文章)とそれについて多角的な観点からの思考をまとめ上げていく作業は、われわれのことばを鍛えてくために不可欠です。
(中略)
人を”ハッ!”とさせる言葉の表現は、作文であれ論文であれ、エントリーシートやプレゼンテーション、それから経営方針の発表に至るまで、深い意味で豊かな論理の展開を含んでいます。
<本文序文より引用>

ちなみに「まだ○○で消耗してるの?」とか「ブログはもうオワコン」というような「煽り」は「ハッ!」とさせるものではなく、「は?」とさせるものです。

 

真の「ハッ!」とさせる文章は、どのような思考のもとに作られるのでしょうか。

 

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イソップ童話の『ウサギとカメ』と「戦略」

『ウサギとカメ』は、ご存知の通り「どんなに能力が高くても努力をしなければ、力はなくても努力を重ねたものに負けることもある」という教訓で知られるおとぎ話です。

 

しかし、本書ではその通念を離れ、「どうすればカメはウサギに勝てるのか?」という「戦略」ランダムシンキングします。

なぜなら、現実社会には努力の積み重ねだけでは勝てない相手がいるからです。

とにかくカメを勝たせたい、勝たせるためにはどうすればいいか。

 

ランダムシンキングによって出てきた戦略は次のようなものです。

 

・ルールをかえてしまう
コース内に巨大なプールを用意することで、泳げるカメに優位な状況を作ります。

・ウサギの恋人を誘惑する
スタート地点で「君の恋人はもらった」と告げ、ウサギを動揺させるというのはどうでしょう。

・ウサギに毒を飲ませる
ランダムシンキングでは正攻法にこだわる必要はありません。「毒を盛る」は社会常識やモラルを除外すれば、もっとも楽に勝てる方法です。

・ウサギに引っ張らせる
相手の能力や特性に乗じ、相手を利用する方法もあります。

・火山が噴火、大地震が発生、レースの価値観がなくなる事態が発生する
レースなんてやってる場合じゃないってことで、目的をすげ替えてしまいましょう。

・プロペラをつける
誰が地上を移動すること限定って言った? 常識を覆すとはこのことです。

・「オレは勝った」と勝手に主張する
カメが勝利宣言すれば信じるギャラリーも出てくる。支持を集めれば「勝利」となるのではないか。

・長生きしたやつが勝ち
レース当時を知るものが死に絶えたあとでは、長生きしたカメの証言だけが信ぴょう性を帯びてくるって論法。

 

もはや詭弁、屁理屈でもありますが、こうやって定説や常識を徹底的に度外視することで「思考」は確かに広がります。

 

そして、なんといってもこのランダムシンキングは楽しい

 

「コレはダメ」とか「そんな考えは通用しない」「それはルール違反でしょ」と考えを打ち消すのではなく、「とりあえず案をあげていこう」「こういう考えもあるなら、さらにー」と考えを広げることもできます。

 

ここでは1例をザックリと紹介しましたが、本書の中ではランダムシンキングについてもっとロジカルに解説されています。

 

『ウサギとカメ』のほかには、

・中国故事『白馬は馬にあらず』と「名前」
・特撮ヒーロー『ウルトラマン』と「正義」
・アンデルセン童話『マッチ売りの少女』と「悲劇」
・マンガ『ちびまる子ちゃん』と「普通」
・御伽草子『一寸法師』と「個性」
・グリム童話『赤ずきんちゃん』と「素直」
・アンデルセン童話『裸の王様』と「虚構」

というラインナップです。

 

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ハッ!とさせるための「文章力」 をブログで実践するためには

同じようなブログが氾濫し、タイトルに「オッ!」と思っても中身はそうでもない記事はたくさんあります。

 

なかには扇情的な言葉で「煽る」ことを「ハッ!」とさせることと勘違いしている書き手もー。

アレは勘違い、大勘違いです。

 

「ハッ!」とさせられるどころか、「あー、ハイハイ」「また、ソレね」となるだけの中身が薄っぺらいブログは、なぜそうなってしまうのでしょうか。

 

「ブログはわかりやすく」の解釈が画一的

ブログは読み手が欲しいと思う情報が「わかりやすく」書かれているほうがいいと言われます。

答えを端的に、平易な表現で、一文を短く。

 

たしかに、これも「わかりやすい」要素ではありますが、これがかえって思考の広がりをおさえているのではないでしょうか。

 

たとえば「○○に最適な方法は△△だった」というよくあるブログ。

記事では、△△の方法を説明し、「やってみた」結果の感想を述べ「最適でした!」でまとめ上げています。

 

そこには、「なぜ△△が最適な方法なのか」「他の方法はないのか」「他の方法とはどこが違うのか」という言及はまったくありません。

さらに「△△が実行できない条件や当てはまらないケースはないのか」という読み手が当然抱くであろう疑問にも答えていません。

 

「わかりやすい」を意識した結果こうなったのでしょうが、「わかりやすい」の解釈があまりに正直で稚拙なため、これではほとんどの人が「ハッ!」とすることはないでしょう。

 

「ハッ!」とさせる文章は、

①何について書くか/テーマが成立する条件、要因/テーマの背景、基盤
②問題にしようとする意図/なぜこれについて書くのか
③全体的な視点/一面的にテーマを捉えたときにはどう見たか/多角的にとらえたときには-/その違いは

という多重構造の中から生まれます。

 

論理だけではとっつきにくい課題ですが、本書のようにお馴染みの話や、よく話題となるテーマをランダムシンキングすることで、読むことも書くことも、もっと豊かになると思います。

 

よくある「ブログの書き方」や「文章の書き方」に飽きてしまった、どうもピンとこない、という人にもおすすめの一冊です。

 

 

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