映画タイトル: アイヒマンを追え ナチスがもっとも畏れた男
原題:THE PEOPLE VS. FRITZ BAUER
製作年:2015年 ドイツ
監督:ラース・クラウメ
映画『アイヒマンを追え ナチスがもっとも畏れた男』は、
ナチスによるユダヤ人大量虐殺(ホロコースト)に関わったアドルフ・アイヒマンを拘束し、裁判にかけることに執念を燃やした検事長の話です。
ドイツではなくイスラエルで行われたアイヒマンの裁判ー。その裏には第2次世界大戦後もドイツ国内で暗躍するナチスの残党と戦いながら、自国の法律で戦犯を裁くことにこだわり続けた検事長の戦いがありました。
何がその原動力となったのかー、検事長の人間性に迫る映画です。
キャスト
・ブルクハルト・クラウスナー(フリッツ・バウワー)
西ドイツ(当時)のユダヤ人検事長
・ロナルト・ツェアフェルト(カール・アンガーマン)
バウワーの部下 新婚だが子供がいない
・リリト・シュタンゲンベルク(ヴィクトリア)
同性愛者が集うクラブの歌手
映画『アイヒマンを追え ナチスがもっとも畏れた男』の見どころと感想
(*ちょっとネタバレありです)
(C)2015 zero one film / TERZ Film
第2次世界大戦後の1950年代後半。検事長フリッツ・バウアーのもとに多くのユダヤ人を強制収容所送りにしたアドルフ・アイヒマンと思われる人物が「南米アルゼンチンに潜伏している」という情報が寄せられます。
ナチス戦犯の告発に執念を燃やすバウワーは部下のアンガーマンとともに調査に乗り出しますが、バウワーの失脚を望む者たちの妨害や圧力にさらされます。
バウワーはアイヒマンに関する情報を「イスラエル諜報特務庁(モサド)」に提供し捕獲への協力を求めます。しかし、このことは国家反逆罪に相当するもの。
「アイヒマンはクェートにいる」というウソの情報で周囲を欺き、この危険な作戦は実を結びー。
評)「自分の正義を貫く」バウワーの生きざま
史実に基づくこの映画の魅力は、なんといってもバウワーの人間性です。自身も強制収容所に送られた経験を持つバウワーは、そこで「ナチスに協力する」と署名したことをずっと後悔しています。
この贖罪の気持ちとドイツ国内で虐殺の事実を風化させようとする動き、さらには当時、刑事犯罪であった同性愛者との性交渉歴に対する蔑視ー、これらへの「抵抗心」こそがバウワーの行動の原動力となったのでしょう。
酒、タバコ、ストレス、肥満、すべてを兼ね備えた完全な「タイプA」のオッサンが、さまざまな葛藤やマイノリティがゆえの孤独と対峙しながら「自分の正義を守る」「自分の正義を貫く」ことに生涯をかける。
部下のアンガーマンも同性愛者ですが、このアンガーマンは映画用に作られた架空の人物だそう。バウワーを失脚させる材料にアンガーマンのスキャンダルが利用されるという、ちょっと切ない展開もバウワーの人間性を描き出すスパイスになっています。
そんなオッサン・バウワーの生きざまをとくとご覧ください。
*歴史的に大きな意味を持つ「アイヒマン裁判」にバウワー検事長が関与していたことが明らかになったのは、彼の死後です。
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