40歳「このままでいいのか」/60歳手前「夫婦愛はどうなる」/老夫婦「二人にしかわからない世界」

まんざらでもない日記

2021年4月1日

新しい年度を迎えました。学校や会社組織に属していない身としては、これといった変化もないのだけれど、なぜか男女の行く末に心かき乱される今日この頃。春です。

(C)THE FUTURE 2011

映画『ザ・フューチャー』(2011年)を見た。監督主演はミランダ・ジュライ。このところハマっている「新潮クレストブックス」から著作が発刊されているマルチアーチスト。映画も撮っているとあれば見ないわけにはいかない。しかもミランダさんの夫は、映画監督のマイク・ミルズ(『人生はビギナーズ』『サムサッカー』)と知ってビックリ。

映画は35歳同棲中のカップルを描いたもの。大怪我をした余命わずかな野良猫パウパウを保護した二人。一旦シェルターに預けたものの自分たちで飼うことを決意する。が、そうなると自分たち本位の自由気ままな生活はできなくなる。生活を見直そうとネットを絶ち、仕事を辞める。ジェイソンは環境保護のため木を売り歩く活動をはじめ、ソフィーは「30日ダンス」をはじめるが、次第に大切に思うものがズレていくー。

30代後半。パートナーや仕事に対する「このままでいいのか」という漠然とした不安。そういえば、そうだったな、と思いだす。猫のパウパウ(ほとんど足だけの出演)の語りが深い。

ちょうど発売されたばかりの文芸誌「Witchenkare」 vol.11に掲載されている掌編『五月の二週目の日曜日の午後』にも共通する手触りが。40歳前後の同棲中のカップルの何気ない日々。その中にはこれから何度も思い出すであろう景色があり、すれ違っていく思いがある。
著者は宮崎智之さん。こちらは猫ではなく犬好き。


(C)2013 Free Range Films Limited/ The British Film Institute / Curzon Film Rights 2 and Channel Four Television Corporation.

一方、その40歳を通り越した熟年カップルを描いた映画『ウィークエンドはパリで』もおもしろい。結婚30周年で新婚旅行で訪れたパリにやってきた二人。心身の老いに焦燥感がハンパない夫。一方の妻は今にもどこかに飛んでいきそうな危うさを秘めている。そんな二人は案の定大喧嘩となりー。

自分を縛り付けていたものから解放されるとき、夫婦愛はどうなるのだろう、と思わされた。
が、映画自体はとってもオシャレでシュール。大人はこんなふうに不完全でいいのかもしれない。いや、不完全だからこそおもしろい。


そして、さらに歳をとった老夫婦に驚かされた。

車の窓ごしに見かけた老夫婦。おじいさんが車イスにのって、小さなおばあさんがそれを押している。
「たいへんそうだな、うちも夫が大柄なので将来こうなるかもな」と思いながらその老夫婦を追い抜いた。運転中の夫に「ね、後ろの老夫婦、将来の私たちかもよ」と言いながら振り向いたら、ビックリ!

車イスに乗っているのはおばあさんで、押しているのがおじいさんになっている。「えっ!?さっきはおじいさんが乗っていてー」という私に、「見間違い、よくあるよ、そういうこと」と夫。「入れ違ったのかもよ」と言うが「そんなことする?」と返され、たしかに、と納得した。

が、その日の寝る前、ふと、あれは見間違いではない 、という思いがふつふつと沸き上がった。そうだ! ドライブレコーダーに映っているのではないか。「まだそんなこと言ってる」と渋る夫とともにドラレコの録画画像をチェックした。

すると驚きの光景が。車で追い抜く前は、たしかにおばあさんがおじいさんを乗せた車イスを押していた。そして追い抜いてからの一部始終がリアカメラにしっかりとおさめられていた。

スクッと立ち上がったおじいさんに代わって、おばあさんが車イスに座った。おじいさんは颯爽とした足取りでおばあさんを乗せた車イスを押し、再び私たちの車の横を通り過ぎた。わずか1分足らずの出来事だった。なぜかはわからないが、そこには二人にしかわからない愛があるように見えた。

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