自分のやり方や考え方が世間と大きくズレているのに、それに気づくことなく持論をぶちまけ大炎上。
「セクハラじゃなくて、言葉遊び」も、「あなた方はセクハラの対象ではない」も、自分では「問題ないでしょ」と思っているのかもしれませんが、よーく考えたほうがイイですよ。
その考えを変えないと、また同じようなことをやらかしてしまいますから。
「自分を変えられない人」や「自分を変えない人」がどういう末路をたどるのか。
それを見事に描いた名作と珍作(?)映画をご紹介します。
映画『道』に学ぶ、「気持ちでつながることを怖がってはいけない」
Trans Lux Inc. / Photofest / Zeta Image
フェデリコ・フェリーニ監督の代表作、映画『道』(1954年)に出てくる「自分を変えない人」は、ザンパノです。
・職業:大道芸人
・性別:男性
・年齢:40代
・性格:粗暴、短気、自分勝手
お金で買った妻ジェルソミーナに身の回りの世話や芸の手伝いを仕込むザンパノは、すぐにキレて怒鳴り散らし、好き勝手な行動を繰り返します。「自分は何もできない」と、自己肯定感ほぼゼロのジェルソミーナですが、持ち前の純粋さでザンパノの心を開こうとします。
が、なんやかんやあってジェルソミーナは精神が崩壊。芸の手伝いもできなくなり泣いてばかりいるジェルソミーナを、ザンパノは雪が積もる廃村に置き去りにします。
そして数年後。ある歌を耳にしたザンパノはジェルソミーナを思い出しますが、すでに死んだことを知らされます。
ジェルソミーナとの思い出のある海岸で、声を詰まらせながら泣くザンパノ。
「遅いんだよっ! ザンパノっ!」
素直に感情を表現することができず、身勝手な態度でジェルソミーナの気持ちにこたえようとしなかった。そのことをいくら悔いても遅いんです。人と深くつながることを怖がっていたのは、あなたのほうじゃないんですか!
官僚だとか、お金持ちだとか、学歴が高いとか、怪力だとか、そういう自分の「要素」を絶対なものと思い込み、それで周囲との関係を築こうとするのはホントに愚かです。そういう要素がいくらあろうとも「感情」の代わりにはなりません。お互いの感情や気持ちを抜きにして、つながりを持つことは不可能なんです。
感情を認めあう。 たとえ同意や共感が得られなかったとしてもー、です。
映画『わらの犬』のに学ぶ、「自分のやり方こだわりすぎるのは危険」
映画『わらの犬』(1971年)に登場する「自分を変えない人」は、デヴィッド。
先ほどのザンパノとは真逆のタイプの人物です。
・職業:数学者
・性別:男性
・年齢:30代
・性格:気弱、平和主義
デヴィッドは妻の故郷で静かに暮らそうとしていますが、よそ者として好奇の目で見られ数々のいやがらせを受ける毎日。それに対し「ちゃんと自分が説得する」と言いつつも行動しないデヴィッド。
あることで精神薄弱の青年ヘンリーを自宅にかくまったことから、奪還に来た村人と壮絶な戦いに巻き込まれます。
戦いの後、ヘンリーを家に送り届けるとき、
ヘンリー「家の帰り道が分からない」
デヴィッド「僕もだ」
と、言葉を交わします。
暴力を否定していたのに、結局は暴力で対抗してしまったデヴィッド。自分が強く否定してきた方法でしか身を守ることができなかった、という皮肉な結果です。デヴィッドは「過去の自分すら信じられない」という苦しみを背負って生きていくことになるのでしょう。
自分の考えややり方にこだわりすぎるのも考えものです。
自分を守るために殻に籠っても、かえって傷つくだけかも。自分のこだわりの方法が使えない、通用しないとなったときに何ができるのか。それでも自分として生きていくためにはー、ということを考えておきましょう。
ウディ・アレン監督、主演映画の『マンハッタン』も同じタイプの「自分を変えない人」が登場します。
こちらは恋愛映画なので殺し合いはありませんが、17歳の恋人の放った最後の一言には、ある意味、殺されます。
「人をちょっとは信頼しなきゃ」
映画『ボーン・レガシー』に学ぶ?「変えられない事情がある?」
最後に「自分を変えるわけにはいかない事情の人」をご紹介します。
映画『ボーン・レガシー』(2012年)のアーロンです。
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ちなみに、『ボーン・レガシー』は、マット・デイモンの「ボーンシリーズ」のアナザーストーリーで、ジェイソン・ボーンの話ではありません。
暗殺者養成計画の全貌が暴かれるのを防ぐために、養成された暗殺者たちが次々と抹殺されアーロンも命を狙われます。が、養成に関与している女性医師マルタの協力を得て追っ手を蹴散らして生き延びる、という話です。
・職業:暗殺者
・性別:男性
・年齢:30代後半
・性格:行き当たりばったり
アーロンは命を狙われるから逃げるー、というだけじゃ「なんじゃこの映画は!」ですよね。ではなくて、アーロンが各地を駆け回るのには理由があります。
暗殺者としての能力を維持するために服用しなければならない「青」と「緑」の2種類の錠剤。これをアーロンは紛失。この薬を手にするために女医を訪ね製造元に向かいます。しかし「緑」の薬は既に服用しなくてもいい状態にあり、「青」の錠剤もそれに代わるワクチンを接種すれば服用の必要はなくなることが分かります。
これ!これこそがアーロンの動機です。
青の錠剤は知能を上げる効果があるもので、実はIQをごまかしていたアーロンにとっては絶対になくてはならないもだったのです。「お薬くださーい」のために戦うのです。
これがなければ自分はバカになる、いや、元の自分に戻るだけじゃん、なのですが……。