『ネットは基本、クソメディア』中川淳一郎 初心者ライターやブロガーにおすすめの1冊!

本と読書

クラウドソーシングでいくつかのWebメディアに医療や看護に関する記事を書いていましたが、正直なところ、

「なぜこんなテーマなんだろう?」
「これが誰の何の役に立つのだろう?」

と思いながら書いていました。

 

「クライアントの指示だからしょうがないか」と、半ば割り切ってもいたのですが、ちょうどその頃、WELQ問題が発覚。

キュレーションサイトやWebメディアのあり方にはさまざまな問題があることが明らかになり、それにもよって私が抱いていたモヤモヤは随分スッキリしました。

 

で、本書『ネットは基本、クソメディア』です。

タイトルはアレですが、中身はWELQ問題に端を発したキュレーションサイト、さらにはネットメディア全体の問題を真面目に解説したものです。

 

著者は、ネットニュースの編集者・PRプランナーの中川淳一郎氏

『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』ほか、長くWebメディアに携わってきた立場から、ネットとの正しい距離の取り方を解説し続けています。

 

本書は、Webメディアに対する認識が甘かった私にとって、「何が問題だったのか」「なぜこの問題が起きたのか」をハッキリさせるとともに、これから自分がWebメディアにどうかかわるべきかの指南書となりました。

 

これから在宅でライターの仕事を始めてみようかな、と考えている人、特に「簡単に稼げる」「誰でもデキる」という言葉を真に受けてしまう、Web界隈をよく分かっていない中高年や主婦の方々には、ぜひ読んでいただきたい1冊です。

「ネットは基本、良いメディア」のためにー。

 

 

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「知らなかった」は危険!WELQ問題につながるWebメディアの発達の経緯

第2章「クソメディアはなぜ生まれたのか」では、1995年頃から、ここ20数年のWebメディアの流れを振り返っています。

 

「ニュース」から「質問系(知恵袋など)」、「掲示板」、「ネタ系オモシロサイト」、「まとめサイト」へと発展する間に、ブログブームが起き、人気ブログの書籍化や芸能人のステマ騒動などがありました。

「ウェブ2.0」という言葉が示すように、ネットにより情報の集約が進み、効率的に必要な情報にアクセスできることは、人々の生活を豊かにすると考えられてきました。

 

しかし、本書では批評家・東浩紀氏の文章を紹介し、「日本のウェブは残念」と指摘しています。

 情報技術はつねに社会改革への希望と結びついてきた。WWWもブログもSNSも、出現当初は新たな公共や民主主義の担い手として期待を集めていた。しかし普及とともに力を失い、単なる娯楽の場所に変わる。
(中略)
ぼくたちはそろそろ、ネットが人間を賢くしてくれるという幻想から卒業しなくてはならない。(本文より引用)

私はそれほど熱いネットユーザーではなかったので、2ちゃんねるやステマなどは「騒動」を知っている程度でした。

また、「ネットが賢くしてくれるー」という幻想もなく、というか「幻想」を抱くほどネットの力を理解できていなかったのだと思います。

なので、ネット周りで起こるザワザワしたことを「自分には関係のないこと」と考えがちでした。

 

が、これらの問題は、その後に起きるWELQ問題や、今なお存在し続けるウソまがいのネット情報と同じ潮流のなかで起きたことです。

それほどネットを利用していなかった人こそ、この流れを知っておくべきでは、と思いました。

 

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ATMの出し子だった!キュレーションサイトのコンテンツ作りの実態

本書の見どころの一つは、問題となったキュレーションサイトがどのように作られていたのかを著者の実体験や関係者への取材によってリアルに解説しているところです。(第3章「グレーゾーンの記事作成」/第4章「コンテンツへの愛は皆無」/第5章「被害にあったクリエイターたち」)

記事へのリスペクトはない

著者が携わったキュレーションサイトでは、フェイスブックでのシェア獲得が記事の目的であり、記事の内容は重視されなかった実態が綴られています。

あくまでもPVを稼ぐ手段としてコンテンツを作成しているだけで、内容はどうでもよく、とにかくアクセスされることを重視する姿勢であることが見て取れた。(本文より引用)

DeNAが事件の経緯を報告した文書では、さらに露骨な「グーグルの検索対策」があり、「パクリ記事」の作り方がマニュアル化されていることも明らかになりました。

マニュアル化された作業にあたるのは、学生バイトやクラウドライターなどの「素人」。

「PV=カネ」のため、クリエイティビティを排除した「絶望工場」での記事作成の実態が明らかにされています。

医療記事をぞんざいに扱う人々

WELQでは、最盛期には3000本/月という膨大な医療記事を出していました。

 

私は、WELQと同種の医療情報サイトで約1年間ライターとして記事を書いてきましたが、看護師としての知識をベースに、専門サイトや文献をあたりながら書くと2本/週が限界でした。

多くのライターを雇えば、3000本/月も実現不可能な数ではなかったのかもしれませんが、筆者が指摘するとおり「無謀」としか言えません。

あまり一般的ではない病気の解説や、個人差が大きく一般的な解説はあまり意味がないと思われるテーマが依頼される背景には、「網羅性」の重視、つまり検索で引っかかりやすくする意図があったのでしょう。

 

ライターの朽木誠一郎氏は、

 「誤った知識に基づいた対応で、病気を悪化させてしまうことほど人生を毀損されることはない。だからこそ、医療・健康系の話題を取り扱う際は、専門家への取材や、厚労省等のデータといった信頼できるソースの紹介など、裏付けをきちんとしないといけない」(本文より引用)

と指摘しています。

WELQや同様の健康系サイトには、こうした意識がなかったことがもっとも大きな問題だったのです。

素人ライターはATMの出し子のようなもの

本書では、作業にあたる、素人ライターを「ATMの出し子のようなもの」と例えています。

(著者がフリーライターのヨッピー氏に話を聞いた際の、ヨッピー氏の発言として紹介されています)

 

悪いこととは知らず、指示されたまま記事を書いている素人ライターのさまは、オレオレ詐欺などで犯罪の全容を知らずに、ただATMでお金を引き出すだけの「出し子」と同じ。

しかも組織がヤバいことになると、「パクったのはライターです」と責任を押し付けられかねない危うい存在です。

 

記事はあくまでのサイトのコンテンツの一部として扱われますが、そのサイト自体が何で収益化されているのか、どういう「広告」と結びついているのかを自覚せずに記事を書いている「ATMの出し子」ライターは少なくありません。

 

自分がどういう構図の中で、何のために記事を書いているのかを知らないという、それ自体が「無責任」なことであったと強く思い知らされました。

 

「ネットは基本、良いメディア」に向けて

WELQ問題を機に、キュレーションサイトやWebメディアの問題が明らかになったことで、まともなネットメディアが存在感を示し始めています。(第8章「自浄作用を示したメットメディア」)

 

紙メディアの編集者たちが、「きちんと取材をした記事作り」という姿勢をWebメディアに持ち込み始めたことや、悪質なパクリ、盗用に対し「怒り」の声を上げる人としてナリシゲ氏Hagex氏の動きが取り上げられています。

また、ネットが特定圏のインナーサークル的な存在では意味がなく、全国の老若男女問わず楽しめるメディアになることが、これからの課題としています。

先の東氏の指摘、「普及とともに力を失い、単なる娯楽の場所に変わる」をふまえ、新しく生み出されるコンテンツが、そうした「消費」や「消耗」をされないようにしなければなりません。

 

終章の「あなた自身もクソメディア?」では、こうしたWebメディアの問題は、個人のブログやTwitter、InstagramなどのSNSでも同じであり、クソメディア化する可能性がある―、と指摘しています。

発信者の分からない情報に安易に乗っかってデマを拡散させたり、ときにはそれが人命や人権を脅かすことにもなりかねないこと、そうならないためにはWeb情報とどう向き合うべきかがまとめられています。

 

自分自身がメディアとしての信用を失わないために、『ネットは基本、クソメディア』は必読の一冊です。

 

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