海外の映画やドラマを見ていて「あれ?これってどこの話だっけ?」となることはありませんか?
地名が出てきてもピンとこない。主人公が旅に出たり引っ越したりするけど、どの程度のスケールなのか距離感がわからない。
問題はこうした物理的な理解だけではありません。国土が広大なアメリカは地域によって気候や歴史、文化、暮らしぶりや法律も違うので、どこの話なのかがわかっていないとストーリー上の重要な意味を取り違えてしまうことがあるのです。
これはいかん! これではせっかくの映画の面白さを充分に味わうことはできません。もったいない!
さあ、今こそ地理の勉強です。
学生時代には地理も歴史もちんぷんかんぷんだった私がガイド役というのもなんですが、「映画を楽しむための地理」をぜひご一緒に。
まずはアメリカ北東部からまいりましょう。
アメリカ北東部の概要
http://www.craftmap.box-i.net/
アメリカ北東部は9つの州(メイン州、ニューハンプシャー州、バーモント州、マサチューセッツ州、ロードアイランド州、コネチカット州、ニューヨーク州、ニュージャージー州、ペンシルバニア州)からなる地域です。前6つの州はニューイングランドと呼ばれています。
アメリカ北東部各州のおすすめの映画
メイン州/ニューハンプシャー州/バーモント州
歴史は古く、イギリスのような街並みと、海や山の豊かな自然がある地域です。
映画『黙秘』ColumbiaPictures/Photofest/MediaVastJapan
メイン州はホラー映画でおなじみの小説家スティーブン・キングの出身地で、ココを舞台に母と娘の心理的葛藤を描いたサスペンスミステリー映画『黙秘』(1995年)はいかがでしょうか。
マサチューセッツ州
マサチューセッツ州といえば一流大学。

『グッド・ウィル・ハンティング』(1997年)は、マサチューセッツ工科大学を舞台にトラウマを抱えた天才不良青年と精神科医の絆を描いた作品です。脚本を手掛けたマット・デイモンは当地(大学はハーバード大ー中退)の出身です。
『ソーシャル・ネットワーク』(2010年)もココが始まりです。
ハーバード大在学中にのちにFacebookとなるサイトを作ったマーク・ザッカーバーグが描かれています。
一方、州の中心地ボストンはアイリッシュ・マフィアの活動地でもあったため。マフィア映画の舞台にもなっています。禁酒法時代のマフィアを描いた『夜に生きる』(2016年)警察官とマフィアが互いに潜入し合う『ディパー・テッド』(2006年)などはいかがでしょうか。
このほか、幼少期の傷が引き起こす悲劇を描いた『ミスティック・リバー』(2003年)や、過去を引きずって生きる男の『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(2016年)、ボストンハーバーの孤島を舞台にした『シャッター・アイランド』(2009年)、リーマンショックでリストラされたエリートサラリーマンの苦悩を描いた『カンパニー・メン』(2010年)などがあります。

それにしても、どれもこれも暗い、重い。 いえ、古くはヨーロッパからの移民と先住民との間で激しい戦いがあった歴史のある土地だからこその「暗さ」が見どころのひとつなのでしょう。
ちなみに『カンパニー・メン』の中で主人公(ベン・アフレック)が面接日を間違ってボストンからシカゴ(イリノイ州)に行ってしまうのですが、この間の距離は1578㎞(私調べ)。札幌ー福岡間よりも遠いんですよ。そりゃ、簡単には出直せませんよね。
遠いといえば『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』も、ラストは彼女のいるカリフォルニアに向かうんですよね、車で。ま、それほどの大きな愛ということなんでしょう。
ロードアイランド州/コネティカット州
ニューヨーク州に隣接する海沿いの州です。
コネティカット州には名門イェール大学があります。
ここを舞台にした映画はこれ。『プレッピー・コネクション』(2015年)

1980年代に名門高校に通う高校生が引き起こした、コカインの密輸と売買網を築いた実際の事件を基にした映画です。学歴や校風に縛られる家族の堅苦しさが描かれています。
ちなみにコカインの買い付け先は南米コロンビア。もちろん飛行機で向かいます。
ニューヨーク州

アメリカ最大の都市ニューヨーク。ここを舞台にした映画は数知れません。
まずは1950年代のニューヨーク。
アイルランドから移民した女性の恋と人生を描いた『ブルックリン』(2015年)、そしてセレブ女性とデパートの売り子の同性間の愛を描いた『キャロル』(2015年) 映画には、当時の女性の社会的地位や恋愛観、仕事観が反映されています。
一方、犯罪も盛んなニューヨーク。イタリア系マフィアの抗争と家族愛を描いた名作『ゴッドファーザー』(1972年~3部作)や、マフィアからひとりの少年を守り抜くジーナ・ローランズ演じる元情婦がめちゃくちゃカッコイイ『グロリア』(1980年)。

闇ポーカーに魅せられる天才勝負師の『ラウンダーズ』(1998年)、麻薬の密売で有罪となった男の収監前夜を描いたエドワード・ノートン主演の『25時』(2002年)など盛りだくさんです。
そしてニューヨークといえば、何気ない街並みやそこで暮らす人々の日常も魅力的に見せてくれます。
煙草屋の主人と作家、わけありの少年が織りなす嘘と真実を描いたポール・オースタ原作の『スモーク』(1995年)、ジャック・ニコルソン演じる偏屈な作家とウエイトレスの恋を描いた『恋愛小説家』(1997年)、初老夫婦が自宅アパートの売却をめぐって人生を見つめ直す物語『ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります』(2014年)、恋人と別れた女性と仕事を失った音楽プロデューサーの再生を描いた『はじまりのうた』(2013年)など、おすすめ映画も盛りだくさんです。

さらに、悪魔崇拝者に狙われる新婚主婦の恐怖を描いた『ローズマリーの赤ちゃん』(1968年)は、オカルトモノなのにニューヨークのお洒落っぷりがたまらない名作です。
そして、ニューヨークといえばウディ・アレン。ニューヨークで恋をして、失恋して、自分探しをして、病気じゃないかと悩んでー。
そんなウディ・アレン作品についてはこちらの記事をどうぞ。
ニュージャージー州

ニュージャージー州は、ニューヨーク州に隣接する工業都市です。
ここを舞台にしたおすすめ映画は『カイロの紫のバラ』(1985年)です。
世界恐慌の真っただ中の1930年代、いかにもな失業モラハラ夫から逃避し、映画にはまりこむ女性セシリア。その彼女におとずれるロマンスを描いた作品です。
ペンシルベニア州
映画『フィラデルフィア』TriStarPicturesPhotofest/ゲッティイメージズ
中心都市フィラデルフィアには、アメリカ独立の象徴でもあるインディペンデンス・ホールがあります。ここを舞台にした映画には、這い上がっていく人々が描かれています。
エイズやゲイに向けられる偏見と闘う弁護士の姿を描いた『フィラデルフィア』(1993年)、三流ボクサーのサクセスストーリーの『ロッキー』(1976年)、ともに心に傷を抱える男女の再生を描いた『世界でひとつのプレイブック』(2012年)。
そして『グロリア』がニューヨークを脱出して向かう先はペンシルバニア州のピッツバーグです。
これらの映画からぜひ、独立の精神を感じ取ってはいかがでしょうか。
まとめ
地理を学んで映画を見るもよし、映画を見ながら地理を学ぶもよし、ですね。
ではまた、「映画を楽しむための地理」でお会いしましょう。
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