終わりなき【納豆40年戦争 】

納豆モロモロの書庫
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ネバネバールの悲劇【 納豆 40年戦争 】

 

昭和53年、とある「お茶の間」でその戦争は勃発した。

 

一人のいたいけな少女が、「騙されたと思って食べてごらんなさい」と、母親に差し出された「納豆」を食べたところ、口内に広がる刺激臭と、ぬぐってもぬぐっても消えることのない粘り気のある糸に苦しめられた。

 

世にいう「納豆事変」である。

少女が「騙されたと思ってー」で母親に騙されることは日常茶飯事ではあったが、この「納豆事変」だけは少女の心に深い影を落とした。

 

少女は、親、教師、タクシー運転手、釣り人、ウグイス嬢など、数々の大人を疑ったり信じたりしながら健やかに成長した。

 

そして時は平成となり、少女は立派な社会人となった。

 

―――――――

 

ある日、立派な社会人は、某先輩の自宅に招かれ手料理をご馳走されることになった。

 

いま思えば、危険極まりないお誘いであるが、立派な社会人は疑うこともなく手土産をもって先輩宅を訪れた。なかなか見どころのある気の利いたヤツである。

 

ふるまわれたご馳走は、いわゆる家庭料理ではあったが、品数も多くいずれもおいしそうであった。いや、実際にとてもおいしかった。あの汁を除いてはー。

 

立派な社会人はひどく狼狽した。

一口含んだ味噌汁に、あの刺激臭とネバネバを感じた。

 

ん! こ、これは!

 

味噌汁に納豆が入っとる!

 

まさか、まさかこんなところにー。

嫌がらせか! イジメか! テロか!
いまで言うところのパワハラか! ナトハラか! そんなもんあるんか!

 

立派な社会人は、とにかくその一口を飲み込んだ。震えながら飲み込んだ。

 

以来、立派な社会人は「味噌汁」を口に含む前には「具」を目視し、指差し確認するという「安全確認行動」を欠かすことなく実行した。なかなか見どころのある真面目なヤツである。

 

―――――――

 

立派な社会人は伴侶をもった。

 

人並に常識を持ち、人並みに消耗しながら生きているフツーの伴侶であった。

 

が、残念なことに伴侶は「納豆」を好んで食べた。

 

「あ、納豆があるけんイイよ」と、立派な社会人が作る、愛がなくては手をつけることさえためらわれるクオリティーのおかずを謹んで辞退することもあった。

 

ふたりはおおむね穏やかに卓を囲んだが、伴侶が納豆に触れた箸で大皿料理に手を付けようとすると、立派な社会人は激怒した。メロスぐらい激怒した。

 

立派な社会人は伴侶が納豆を食べた際のあと片付けには細心の注意を払った。

 

特にパック! あの発泡スチロールの軽々しさが思わぬ災難を招いた。

手に触れないように充分に開けておいたはずの蓋が、何を勘違いしたかペコリと閉じやがり、立派な社会人の白魚のような手の甲に触れた。

 

「軽々しく触るんじゃねーよっ! ゴラァァァ!」

立派な社会人の怒声が、玄界灘の荒波となった。

なかなか見どころのある豪快なヤツである。

 

 

時は流れ、元立派な社会人は物書き中年女史となった。

納豆および納豆信奉者を根絶せんがため、物書き中年女子は立ち上がー、

 

ろうとした。

 

が! 立ち上がれぬ! 膝が痛い!

 

物書き中年女史は思量した。

「冷え」「体重増加」「ホークスファンでありながら『スクワット応援』をやってみた」など、思い当たるフシは多々あったが、これは「加齢によるもの」に違いない。

【医者に言われて、やり場のない思いがする言葉】3年連続第2位の「年齢的なものです」だ。

(*ちなみに第1位は、「このまま様子をみるしかありません」です。)

 

軟骨成分であるグルコサミンやコンドロイチンのサプリをネットで購入しようかと思ったが、残念ながらそれらには即効性はない。

遠赤外線膝サポーターも気休めにしかならん。

 

しかし、このまま立ち上がることができなければ事態は深刻化する。

下肢に血栓ができてしまう。深部静脈血栓症である。この血栓が肺に達すると、最悪の場合「肺塞栓症」を起こすことになる。

いわゆる「エコノミークラス症候群」である。

「うちはいつもビジネスクラスよっ!」と、見え見えのウソで反論しても全く無意味である。

 

肺塞栓症の予防は、すなわち血栓の予防。

血液をサラサラにしなければならないのだー。

 

 

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ナットウキナーゼの奇跡【納豆40年戦争】

「そこでおすすめしたいのは、ナットウキナーゼです。」

 

まさか、この流れ! あの「青汁」のCMパターンやん!

 

夫婦ふたりで野菜農家として頑張ってきたが、ある日お父さんが倒れてしまう。

東京で会社員をしている息子がときどき手伝いに来てくれるが、お母さんひとりではとてもやってはいけないー。

そんなある日、知り合いに「青汁がイイよ」と言われ飲み始めたところ、お父さんはみるみる元気になり、今でもこうしてふたりで野菜を作ってー、というアレか!

 

ここまでさんざんくだらない話で引っ張っておきながら、宣伝か! アフィリエイトか!

 

ならぬ! 気になる方は薬局薬店でご購入のうえ、用量、用法を守って正しく服用しましょう。

 

それにしても「ナットウキナーゼ」め。

 

ナットウキナーゼは納豆菌の分泌酵素の1つで、フィブリン(血栓の主成分)を溶解する作用があるというが、そんな素晴らしい作用もかすむほどのネーミングはどういうことか。

 

自身の出どころが「納豆」であることをまったく隠そうともしない。

これほどまでに分かりやすいネーミングがかつてあっただろうか。

 

「カテキン」は「ヒカキン」とは何の関係もないし、「ピコリン」は「コリン星」に住む小星人のことではない。

「ドコサヘキサエン酸」は「あんたがたどこさ、肥後さ、熊本さ」と、なーんの関係もなかっ!

 

皆が慎ましく隠しているというのに、「ナットウキナーゼ」

わかりやすすぎるやん。誰も間違いようがないやん。

いまだに「米津玄師」のことを、徳の高い僧侶か何かと勘違いしている中高年への配慮ですか!

 

物書き中年女史は懊悩した。

 

正々堂々と出自をアッピールする「ナットウキナーゼ」のことを忌々しく、いや、心底うらやましく思った。

 

「ブログは自己開示が大事!」と言われながらも、おいそれとそれに従うことはできず、50年近くこじらせた自意識を小出しにしているというのにー。

「#ブロガー仲間募集」「#ブロガーさんとつながりたい」の文字を見るたびに、憧れと嫌悪がないまぜになった何とも言えない気持ちを味わっているというのにー。

 

物書き中年女史は痛む膝を抱えながらむせび泣いた。

「ナットウキナーゼ」はそんな物書き中年女史を暖かく見守った。

 

そして、白く輝く発泡スチロールの小箱をそっと差し出した。

 

「さあ、騙されたと思って、これをお食べー。 メリークリスマス」

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