「書くことの楽しさ」がここにあり。中野翠「サンデー毎日コラム集」

中野翠本と読書

毎年年末に発売される中野翠氏のコラム集。
週刊誌「サンデー毎日」の連載コラム『満月雑記帳』(2度の改題の後、現在はこのタイトルとなっています)の1年分(前年の11月~本年10月)をまとめたものです。

「サンデー毎日」をリアルタイムで読むことと比べたら、最大で1年の遅れをとることになるのですが、それでもいいんです! コレなしでは新年は迎えられん!

というコラム集です。

中野翠氏のコラムの魅力

世相や政治に対する中野氏の語り口は、とても垢抜けていて粋でカッコいい。辛辣な意見も多いけれど、ベタベタした粘着質なところはないし、オバサン的な説教クサさは微塵もなくカラッとしている。やたらと励ましたり癒したりすることもなく、そこにあるのは「ほどよい日常感」。

すごく関心があることでも時間が経つと忘れてしまうことはたくさんあります。が、自分がどこかに流し去った出来事が、このコラムを読み返すとしっかりと思い出されます。しかも、個人的な記憶も込みで。

映画評で取り上げる作品も私好みのものが多い。いや、長いこと影響を受け続けてきたのだから好みが似ていて当然なんです。中野氏本人によるイラストも絶妙で、メリル・ストリープをはじめ、数々のハリウッドスターがイイ感じに弄られています。

装丁は、菊地信義氏。毎年ステキな装丁もこのコラムの楽しみのひとつです。

私の「書くこと」の原点はここにあり

中野氏の「サンデー毎日」のコラムが始まったのは1985年。昭和60年です。
みなさん、生まれておりましたか? 私は17歳、女子高校生です。うら若き乙女でございました。

当時の私は、一般的な17歳の趣味嗜好から若干はずれていたとはいえ、愛読書が「サンデー毎日」だったわけではありません。私がこのコラムに出会ったのは28歳となった1996年。『クダラン』が発行された年でした。


(朱色のカバーが印象的)

当時の話題を中野氏がどのように記しているかというとー。

・NHKの「紅白歌合戦」の小林幸子の衣装(装置)の派手さに飽き始める。
・吉川十和子(吉川だったのよ)さんの君島家に嫁入りに驚く。
・寅さんでおなじみの渥美清さんが亡くなり、「死に顔は絶対に人に見せるな」と言い残したことに感銘。
・野村沙知代さんの新進党(当時)から出馬に呆れ、落選に胸をなでおろす。
・映画の話題では『ユージュアル・サスペクツ』を絶賛。

などです。あー懐かしい。小林幸子の衣装の話題ってそんなに昔だったのね。
今となっては、何が当時の私を面白がらせたのかはわかりませんが、世の中の出来事や渦中の人、映画、本、服飾などの話題に、笑ったり考えさせられたりしました。

何気ない出来事であっても、「このことを書きとめておきたい」と思った「自分の感覚」はかけがえのないもの。誰かが代弁してくれるものでもないし、将来の自分だって、そのままに思い出すことはできないかもしれない。忘れてしまうであろう些細な出来事や、なぜだか心に引っかかってしまうことを、あえて書き残していくことは、案外楽しいことかも。

これが私の「書くこと」の原点になりました。


昭和、平成、令和をまたぐコラムよ、いつまでも。

◆2020年最新刊は『いいかげん、馬鹿』です。

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