『王妃マリー・アントワネット』 遠藤周作 手に入れるものと失われていくもの

『王妃マリー・アントワネット』 遠藤周作 手に入れるものと失われていくもの

『王妃マリー・アントワネット』は、オーストリアからフランス王室に嫁ぎ、国王ルイ16世の王妃となったマリー・アントワネットの生涯を描いた作品です。

美しい容姿と贅沢三昧の暮らしぶりで、フランス国民の興味と反感を買い、ついには斬首刑に処せられた王妃。

そのドラマチックな生涯は、幾多の映画や小説でも取り上げられ、あまりにも有名です。

 

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遠藤周作が描く マリー・アントワネットの生涯

遠藤周作氏の本作は、マリー・アントワネットが皇太子妃として14歳でフランスに迎えられたところから、37歳で亡くなるまでのストーリーです。

 

ヴェルサイユ宮殿で華やかな暮らしを送り、常に美しく優雅であることを追い求めたマリー・アントワネット。

夫ルイ16世に「男」の魅力を感じることができず、貴族との恋を楽しみ、旧態依然とした宮中のあり方に不満を抱き、慣例に従うことを嫌い、一方では窮迫するフランス王国の財政の立て直しを拒むー、といった「わがままで世間知らず」なイメージそのものの姿があります。

 

物語はこれと並行して、王妃とは正反対の境遇にある同い年の娘マルグリッドの姿を描いていきます。

 

両親はおらず、こき使われるパン屋を逃げ出し、辿りついたパリでやがて娼婦となるマリグリッド。

マリー・アントワネットのことを「あの女」と呼び、自身との境遇の違いと、それを産み出している社会や神までも憎み、その気持ちを原動力に生きていきます。

 

接点のない二人の人生はやがて交差し、物語は結末へ向かっていきます。

 

手に入れるものと失われていくもの

フランス革命により王室や貴族の権威は失われ、没落していくマリー・アントワネット。

しかし、最後まで王妃としての気品と優雅さを失うまいとします。

その生き方は、世間知らずの贅沢な王妃としてではなく、家族や国王のことを思う母であり、妻である一人の女性の姿です。

 

一方、革命により自由を手に入れていくマリグリッドら市民は、敵意と残虐性がむき出しとなり、信仰や善意すら失われていきます。

 

「善とは何か、悪とは何か」
「人として生きるとは、死ぬとはー」

 

人間の普遍的なテーマが、作者ならではの宗教的な観点によって描かれています。

 

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フランス革命ものとして読み応えあり

子供の頃に『ベルサイユのばら』『ラ・セーヌの星』を見ていたものの、「フランス革命もの」にドはまりしたこともなく、正直そのあたりの「史実」についての知識も乏しいのですが、それでも、マリー・アントワネットの物語って、やっぱりむちゃくちゃ面白いんです。

結末はわかっていても、いや、わかっているからこそ、そこまでの生き方に興味をそそられるのかもしれません。

 

*『ベルサイユのばら』とは、

池田理代子の漫画(通称「ベルばら」)。
フランス革命前~革命初期のベルサイユ宮殿を舞台に、男子として育てられマリー・アントワネットに仕えた兵士オスカルとフランス王妃マリー・アントワネットらの人生を描いた作品。

*『ラ・セーヌの星』とは、
1975年に放送されたテレビアニメ。
フランス革命のパリを舞台に、実はマリー・アントワネットの異母兄弟である花売り娘シモーヌが、剣士「ラ・セーヌの星」に姿を変え、「黒いチューリップ」とともに、横暴な貴族らと戦う物語。

 

マリー・アントワネット、マリグリッドのほかにも、愚鈍と言われながらも国王の誇りと、王妃への愛を失わなかったルイ16世

王妃への恋心を抱えながら、最後まで助けようとするスウェーデン(作中ではスエーデンと表記)の貴族フェルセン(『ベルばら』ではフェルゼン)。

革命のなかで「信仰とは何か」に直面し、大きな決意を下す修道女アニエス

狡猾な詐欺師カリオストロ博士 と、「首飾り事件」によって陥れられてしまうラ・モット夫人ロアン大司教。などなど。

 

多くの登場人物たちが、ストーリーに多面的に見せる群像劇としても楽しめる作品です。

 

 

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