映画タイトル:マンソン・ファミリーの休暇
原題:Manson Family Vacation
製作年:2015年 アメリカ
監督:J・デイヴィス
映画『マンソン・ファミリーの休暇』は、
平穏に暮らす弁護士と突然現れたカルト信者の兄を描くブラックコメディです。兄が興味を抱くのは1960年代~70年代にアメリカ中を震撼させたカルト指導者、チャールズ・マンソン。製作はデュプラス兄弟。兄弟が描く大人の兄弟の確執とはー。
キャスト
・ジェイ・デュプラス(ニック)
弁護士 結婚し裕福で平穏に暮らしている
・ライナス・フィリップス(コンラッド)
ニックの兄 長年疎遠の仲
・レオノーラ・ピッツ(アマンダ)
ニックの妻
・アダム・チャーニック(マックス)
ニックの息子
・トビン・ベル(ブラックバード)
環境保護団体の創始者
映画『マンソン・ファミリーの休暇』の見どころと感想
(*ちょっとネタバレありです)

弁護士として成功し幸せな暮らしを送るニックのもとに、長年音信不通だった兄コンラッドが訪ねてきます。芸術家の兄は環境団体で働く予定があり、そこに向かう途中に立ち寄ったと。
そして、チャールズ・マンソン事件(シャロン・テート事件) の現場となった家を一緒に訪ねようと言い出します。
殺人事件の現場で嬉しそうにはしゃぐ兄に違和感や不信感を募らせながらも現場巡りにつきあうニック。その道中、兄弟の間にある亀裂が明らかになってきます。
養子であったコンラッドは弟ニックが生まれたことで親の愛情を受けられなくなり不遇な人生を歩んできたと。一方、ニックは兄のほうから離れていったと反目。
そして二人の旅は思わぬ方向にー。
評)「こういう人もいるんだろうな」と思わせるブラックな余韻
単なる兄弟の確執と思いきや、そこにチャールズ・マンソンが絡んでいるー、というかなり奇抜な設定。が、兄コンラッドがなぜカルトに、なぜマンソンの事件に固執するのかが徐々に明らかになっていき、奇抜なだけではない真意が見えてきます。
コンラッドみたいな人ってけっこうたくさんいるんだろうな、と。
事情はどうあれ不幸な境遇からの逃げ先にカルトがある。そこに救いを求めてしまう気持ちもわからないでもない。けれども弟ニックも裕福で幸せとはいえ、子供時代の複雑な事情に心を絡めとられているわけで、何が幸せかはわからない。なので兄弟のわだかまりをなくして、それぞれの幸せをー、と思ってたらちょっとビックリなラスト。
で、あらためて「こういう人もいるんだろうな」と思わせるブラックな余韻の1本です。
真面目な弟ニックを演じるジェイ・デュプラスは製作も担当。実弟マークとともにインディペンデント作品を製作しており、マークとサラ・ポールソンの2人芝居『ブルージェイ』(2016年)もその一つ。
大人になりきれない、大人になるのが難しい大人を丁寧に描く作風は必見です。