『枕もとに靴 ああ無情の泥酔日記』 北大路公子 日記ブログは自由で孤独

本と読書

北海道が生んだ人気作家、北大路公子氏。

あの長澤まさみや、あの榮倉奈々ら「長身美脚美女」がこぞっておすすめする爆笑エッセイの生みの親です。

ヘタな筋トレには勝るとも劣らぬ腹筋刺激効果があり、ここ数年読み続けている私ももうすぐ長澤まさみや榮倉奈々のようになるー、予定です。

ま、まだその兆候は微塵もあらわれておりませんが、ひとまず北大路エッセイの原点となる1冊をご紹介しておきましょう。

 

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『枕もとに靴 ああ無情の泥酔日記』とは、

『枕もとに靴 ああ無情の泥酔日記』は、北大路公子氏が2001年3月からネットの公開日記サイト「エンピツ」(←2020年8月現在も稼働中です)に「モヘジ」というハンドルネームで投稿していた「なにがなにやら」という日記が書籍化されたものです。

作家、山本文緒氏の解説(巻末に掲載)によると、当時から「なにがなにやら」は大人気で、ネットでは「モヘジ」はちょっとした有名人だったそうな。

あの眞鍋かをりが「ブログの女王」と呼ばれ始めたのが2004年あたりなので、それよりも3年も前から人気ブロガーだったわけですが、山本文緒氏も書いているように、今でいうブロガーとは全然違う、ベクトルは真逆の存在だったのです。

念のため補足しておきますが、煽り気味に情報商材を売りつけようとしたり、オンラインサロンに誘導しようとしたりすることなく、ただただ酒にまみれる日々を綴った日記を公開していたのです。

 

で、この面白さに気づいてしまった編集者が声をかけ書籍化されたのが2005年(北海道の出版社・寿郎社より)。このときに出版社社長によって現在のペンネーム「北大路公子」が名付けられたのだそう。

 

2005年といえばそう、あの長澤まさみがセカチューを経て、大ブレイクした頃のお話です。

 

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北大路日記文学の読みどころ

「北大路日記文学」なんて勝手に物々しい命名をしてしまいましたが、もちろん「魯山人」とも「欣也」とも無関係です。

北大路公子氏の書く日記というのは、普通の日記のようで普通の日記ではありません。

呑んだくれて1、2行で終わっている日もあれば、出来事を克明に記した日もあり、ときには不思議な世界に誘う短編小説のようなホラ話の日も。

 

当時37、38歳のキミコさんは、物書きの仕事をしたり、するふりをしたりしながら、呑んだくれて猫の「斎藤くん」(のちに19歳で他界されます)と戯れる日々を送っています。
彼氏(ヤギさん)はいたようですが、2人は恋人同士らしい揉めごとを起こすわけでもない。
キミコさんは精神的にもフラットで、激しく落ち込むこともなければ、やる気に満ち溢れることもない「健全なの呑んだくれ」です。

 

そんな呑んだくれのどうでもいい日常が、豊富な語彙と、ときに無駄に重厚で、かつ多彩な表現によって綴られている。その日記を読んでいるうちに、あの長澤まさみに近づくー、

 

はずが、呑んだくれキミコに近づいている現実に慄くのです。

 

日記ブログは自由で孤独

モヘジさんが書き始めた「なにがなにやら」からおよそ20年。
ブログ文化はすっかり世に定着しました。

日記ではないブログ(情報発信、ファンビジネスなど)も増え、読まれるための工夫や作為が透けて見える読みものにウンザリすることも。

 

この本の中の(モヘジ改め)キミコさんは、自分の不甲斐なさを憂うことはあっても、そんな自分をどこか達観しています。

自由で孤独というのはなかなかいい気分だ。おそらく私はこんなふうに見知らぬ人たちが集まって、思い思いの本を読んだり読まなかったりし、でも誰かに「なにしてるの?」と聞かれたら、全員が「雨宿りをしている」とこたえざるをえない、この奇妙な状況が好きなのだろうと改めて実感する。そしてその不安定さに安心感を覚えるのだろうと。なんだかそれは生きることによく似ているといつも思う。すべての人間が結局のところ、「生きてる」としかこたえざるをえないようなまさに人生そのものに。

<本文より引用>

 

この本は、ほぼほぼ泥酔話なので、夜、呑みながら読むのにピッタリなのですが、ときどきこうして胸に刺さる一文が出てくるので、ハッとさせられます。

 

「自由で孤独」 日記ブログって、つまり、そういうものかもしれません。

 

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さて、北大路公子氏は『枕もとに靴 ああ無情の泥酔日記』以後も、爆笑エッセイや小説を発表されています。 Twitterでも、2001年当時とほぼ変わらない日常が確認できます。

ぜひお楽しみください。

 

 

◆引き続き長澤まさみ化する(予定の)私は、続編のこちら(キミコ39~40歳)を読みます。

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