『きみがくれたぼくの星空』ロレンツォ・リカルツィ 愛を知ることで自分を肯定できるように

きみがくれたぼくの星空本と読書

ロマンチックな気分になりたかったわけではないのですが、タイトルと装丁に惹かれて手に取ったこの本『きみがくれたぼくの星空』

第一印象とはまったく異なる読み心地でしたが、私の想像をはるかに超えた、私史上最高にロマンチックな1冊です。

 

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『きみがくれたぼくの星空』はこんな話

舞台は老人ホーム。

脳梗塞の後遺症で半身にマヒが残り、自分一人で立つことも歩くこともできない「ぼく」=トンマーゾ・ペレツ。

トンマーゾは、息子(ダヴィド)を交通事故で亡くし、妻カレンとは死別しています。

 

80歳を過ぎた今も、

「意識の底の底にある、ぼくという人間の究極のエッセンスは20歳の、14歳の、いやたぶん9歳のころのぼくのエッセンスそのものだ」(本文より引用)

と思いながら退屈な毎日を過ごしています。

元物理学者であるトンマーゾは人と交流することを嫌い、老人ホームの行事参加も苦痛でしかありません。食事後、われ先に部屋に戻りたいと主張する老人や、トイレの一番近い席を奪い合う老人たちを嫌悪し、介護者に対しても「もの」のように扱われることに不満を抱いています。そして、自分自身ともうまくやれない。

 

「ぼくは穏やかな人間であったためしがない。不安の中をさまよったり、生きることそのものに苦痛を感じたり、違和感を感じたりしながら生きてきた。」
「年をとると、自分のパロディーになり、若いころから年月かけてこしらえてきたもののカリカチュアになり、欠点は巨大化してこっちもまさにカリカチュアになる。周囲はそれに気づいても、本人だけは気がつかない」(本文より引用)

 

そんなトンマーゾにとって唯一の救いとなるのが、老人ホームで知り合った女性エレナの存在です。

エレナいわく、トンマーゾは「手のつけられないニヒリスト」だったのですがー。

 

―――――――

 

「ぼく」の一人称で、これまでの人生や老人ホームでの暮らし、エレナへの思い、ほかの入居者や介護者への批判、不満が綴られていきます。

 

80代の男性の心理としてはあまりにも瑞々しくて、それがかえって切なく感じてしまうのです。

 

―――――――

【再びあらすじです】

エレナはトンマーゾの誕生日に、かつてトンマーゾが勤務していたで研究所(モンテマリオ天文台)に連れて行き、トンマーゾに星を見せることにー。

そして、そこでかつての助手マンフレーディと再会し、トンマーゾは過ぎ去りし日々を懐かしみます。

 

その帰り道、天文台で仕事をしていた頃の緊張や未知の世界への期待を思い出し、いまの自分はそれを忘れていたけれど、まだそんな熱い感情を持つことができるのだと思うトンマーゾ。

トンマーゾは、エレナがそのことを思い出させてくれたことに気づき、エレナに深い愛を抱きます。

がー。

 

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愛を知ることで、自分を肯定できるようになる

神経科医となったかつての理学療法士ステファノがまとめたトンマーゾのメモや日記によって、その後の様子が明らかになっていきます。

トンマーゾは生きる喜びを取り戻していくのです。

 

ステファノが綴る物語はトンマーゾの死後、かつてトンマーゾの助手であったマンフレーディ博士を尋ね、若き日のトンマーゾの姿を追います。

 

研究者時代のトンマーゾは「光の速度は、少なくともこの世界が生まれたころは、一定ではなくて、もっと速かった」という仮説のもとに研究を続けていましたが、一か所のミスに気づきその証明は失敗におわっていました。

トンマーゾにとってこの研究は『幻想』となっていたのです。

しかしそれが、近年の研究で「光の速度がゆるんだ」ことが証明されつつあるという マンフレーディ博士 。

 

ふたりは、大きな夢を実現できなくとも、その夢を捨てることなく持ち続けた人生だったー、と、亡きトンマーゾに思いを馳せます。

 

―――――――

 

純愛ものですよ、これは。

エレナがあまりにも完璧すぎてナンですが、自分の死後、トンマーゾにあてた手紙には涙があふれてきます。

トンマーゾは、「自分はこんなにも愛されていた」と知ることで、自分を肯定できるようになるのです。

 

私自身もトンマーゾほどではありませんが、自己肯定しているとは言い難い生きっぷりです。自分がそうは思わないのに褒められたり慕われたりすると、相手に対し胡散臭さすら感じてしまうので、前半のトンマーゾの気持ちが痛いほどわかります(上記、引用部分)。

「自分を肯定しよう」「自分を好きになろう」と簡単に言いますが、簡単に言ってるその中身は、ただの「甘え」じゃないの?と。

 

で、このトンマーゾとエレナの純愛物語。

これを読むと、「自分を愛すること」って、長い時間をかけて、ちょっとずつ自分に贈るプレゼントなのかもしれないなと、思えてくるのです。

 

作者ロレンツォ・リカルツィはイタリアの作家で心理学者。

この作品以外にはこれといったものはなく(スイマセン)、この本に巡り合えてホントによかった。

 

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