いい歳してなんですが、私はいまだに「人見知り」です。
あとどのくらい生きられるのかはわかりませんが、おそらく人生の半分以上は経過していると思われるいい大人が「人見知り」って「どんだけ厨房をこじらせてるんだ、オイ」と思われるでしょう。
が、世間が言うほど「人見知り」の克服は簡単なことではありません。人見知りがゆえにチャンスを逃すこともあり、人見知りがゆえに人に誤解を与えることもありー。
自分でも「人見知りはいかん!」「人見知りはもったいない!」と思ってはいるのですが、なかなか直すことができません。ブロガーが集まるサロンとか絶対ムリだし、Twitterで「ブロガー仲間募集!」とか「このツイートをRTしてくれたら読みに行きます!」とかいうアッピールもできない、というか、しません。
そんな熟練の人見知りの私が「人見知りの克服法」などをエラそーに語ったところでまったくもって説得力がない。もはや、私に残された道はコレです。
「いかにして、人見知りのまま幸せに生きていくか」
映画でそのヒントを探してみましょう。
「人見知り」がゆえのオモシロい存在感を身につけたい 『ウディ・アレン監督作品』
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初期~中期のウディ・アレン監督作品には、ウディ・アレン自身が演じる人見知りの主人公が登場します。『マンハッタン』や『アニー・ホール』『さよなら、さよならハリウッド』ほか、とにかく人間関係が上手くいかない人ばかり。
彼らの人見知りは、もはや「対人恐怖症」の域で、人見知り以外にも「過緊張」「妄想癖」「不眠症」「心配性」などを併発しています。
こんなに生きにくいであろう彼らですが、人見知りがゆえの「人との距離の取り方」「自分に向けられる言葉や態度の受け取り方」は愛おしく、面白く、そして学ぶところも多い。フツーに受け止めればいいものを「そうとる?」「そっちに曲げちゃう?」と唸らせる気持ちのありようこそ、”人見知りの権化” “キングオブ人見知り”のなせるワザなのです。
人見知りは「大人しい人」という印象を持たれ「意識高い系」や「ワナビー系」「ウェイ系」にマウントされがちですが、けしてそれに甘んじているわけではありません。
「『人見』とは他人の目、『知る』とは気にすること」が語源とも言われる「人見知り」。人見知りの人ほど人の言葉や行動をよく見ています。むしろ見過ぎていらぬ心配をつのらせて行動をためらってしまうのです。
つまり「言いたいこと」のストックはめちゃくちゃ多く、その発露の仕方もさまざまです。よくわからないたとえ話、皮肉、冷笑ー、これらを巧みに使いこなすウディ・アレン作品の主人公たちを参考に、「意識高い系」や「ワナビー系」「ウェイ系」とはまったく異なる存在感を示していこうではありませんか。
「人見知り」は役割で克服できる、かも 『英国王のスピーチ』
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『英国王のスピーチ』(2010年)は、吃音に悩む英国王ジョージ6世(コリン・ファース)が、言語療法士ライオネル(ジェフリー・ラッシュ)との関わりを通じて吃音を克服していくお話です。
ジョージ6世は子供の頃から吃音に悩み、性格も内向的。先代の国王が逝去し、後を継いだ兄(エドワード8世)は王位よりも「愛」を選び早々に退任。ジョージ6世は王位に就いたもののスピーチがド下手で国民はドン引きー。言語療法士のもとでスピーチを特訓することになりますが、この言語療法士にも心を開かない。なかなかの人見知りです。
が、そんなことは言ってられません。だってジョージは英国王。ヒトラー率いるナチスからイギリスを守らなければなりません。ジョージはライオネル(言語療法士)と二人三脚で国民に向けたスピーチにのぞみます。
そして、その感動的なスピーチが人々の心に届きます。
つまり、ジョージ6世は「英国王」という役割を背負ったことで吃音と人見知りを克服できたのです。
「人見知り」が不幸を招く?『バーバー』
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『バーバー』(2001年)は、殺人事件を起こしてしまった寡黙な理容師の男、エド(ビリー・ボブ・ソーントン)が、自分の罪に翻弄される物語です。
エドは「人見知り」というというよりも「人間嫌い」。人と関わることを煩わしく思っています。なのに周りはおしゃべりばっかりという不幸。その日常にちょっとした変化をー、と思ったことから予想外の顛末に。
エドは途中で気づいたと思うんですよね。「どう抗ったところで、人生の大逆転はない」と。すべてが自分の思いとは違った方向に転がっていく。周りはみんな好き勝手なことをしているし、自分は寡黙な男と思われているならそのとおりに生き抜いてやろうと。
積極的に人とコミュニケートしないことを選んだ男の結末はー。
人見知りがゆえに損をしてしまうことは少なくありません。でも、そこで「どうせ」と投げてしまってはいい方向には進まないのでしょう。人見知りは人見知りなりに前向きに生きていく。
エドもなんだかんだ言って、思わぬ「前向き」さを見せたラストは見ものですよ。