「猛暑日」と聞いても、もはやため息しか出ない。
「酷暑」とか「災害レベルの暑さ」という言葉も、まだこの暑さを充分に表現しきれていないと思う今日この頃、更年期の皆さま、いかがお過ごしでしょうか。私は今日も汗だくです。
今から10年ほど前ー、駅のホームに立っていると背後から初老期の女性と思しき会話が聞こえてきた。
「若いころは汗なんて書かないと思っていたけど、あの頃はねー、急に汗かくようになって大変だったわ」
「そうね。私もそうだったわ」
汗だくの私に向けられた言葉であることはほぼほぼ間違いなかったが、ご婦人方は私に「聞こえていないもの」として話を続けていたので、こちらも「聞こえていないもの」として聞いた。
すると、
「でも、60過ぎたあたりから、また汗はかかなくなったもんね」と。
「そーなんですか!!」
振り返って詳しい話を聞きたくなる気持ちを抑え、私はちょうどやってきた電車に乗り込んだ。
話の主は70歳前後の女性、二人とも色白でやせ型。サラッとした素材の長袖ブラウスをお召しで、白っぽいレースの日傘を持っていた。その言葉の通り汗はかいておらず見た目も涼やか。どことなくガーリーな雰囲気さえ漂わせていたのです。
「更年期を過ぎれば『少女性』が戻ってくる」という希望!

あれから10年。
私はそこいらの「おっさん」には負けないくらいの多量の汗をかき、涼しげな見た目からは程遠い更年期の夏を過ごしています。
更年期の不快な症状対策は、「バランスの良い食事」「適度な運動」「充分な睡眠」というド定番の3点セットを基本とし、それでも症状がしんどいならば婦人科でホルモン療法という道があります。
私の場合、イライラや落ち込み、動悸、頭痛、不眠などの更年期症状はなく「発汗」が一手に引き受けているかのような状態なので「基本の3点セット」でなんとかしたいと思っています。
が!私を支えているのはこの貧弱な「3点セット」だけではありません!
60歳、いや70歳あたりで「再び『少女性』を取り戻せる!」という希望です!
エッセイストの酒井順子氏は、著書『中年だって生きている』の中で、
中年女との相性は最悪の少女性ですが、なぜか女性がもっと年をとって老年になると、再びガーリーな雰囲気がマッチするようになってくるのです。(中略)オーバー七十五くらいになると、すでに肉体がすっかり乾いた状態になるからこそ、少女のように可愛いものを身につけた時の生臭さがきえるのでしょう。
『中年だって生きている』より
と記している。
短命の一族に生まれた私としては75歳は若干厳しい目標なので、ちょっと前倒しして70歳、いや68歳くらいで「少女性」が取り戻せる、としたい。しかし、ただ時が過ぎ「68歳」を迎えたときに、ガーリーな私が自動的に戻ってくるわけではないでしょう。そんなに甘くはないはずです。
それ相応の努力をしなければー。
「ガーリーなおばあちゃん」になるために
女性に限らず「いつまでも若々しい」のは素晴らしいことだけれど、その「若々しい」と言われる仕上がりに賛同できないことも多々あります。
めちゃくちゃ身体を鍛え上げるとか、詐欺容疑でタイで逮捕(2017年)された「62歳の聖子ちゃん」みたいな過剰な肌見せとか、人為的に口角をあげて「ジョーカー化」してしまうとかー、そういうことではない。「少女性」を取り戻すということは「いつまでも若々しくあるための努力」とか「若返り」の延長線上にあるものではないのです。
「ガーリーなおばあちゃん」は、少女のころに大好きだった世界を大切にし、上手に枯れていったものだけが到達できる境地なのです。
そう思って、今日も更年期の生臭さを汗とともに流すのであった。