映画の前半と後半のギャップについて

映画

前半はむちゃくちゃオモシロいのに後半が物足りない映画もあれば、ものすごく退屈な前半からまさかの後半に驚かされる映画もー。こうした前半と後半のギャップが、その映画の好き嫌いや個人的な評価を決める要因となることもあるでしょう。

そんな映画の前半と後半のギャップについて考えてみました。
映画を見る、そしてレビューを書くご参考になれば。どうぞ。

映画は基本「三幕構成」

Summit Entertainment / Photofest / ゲッティ イメージズ

映画に限らずストーリー作りの基本となるのは「三幕構成」です。
三幕とはそれぞれ「設定」「展開」「解決」という大きな区切りのこと。登場人物や時代、場所など「設定」、何らかの事件や対立、問題が描かれる「展開」、そしてその「解決」です。(ザックリ説明スイマセン)

この三幕構成がすごくわかりやすい映画( 例『ラ・ラ・ランド』-写真)もあれば、あえて複雑に構成された映画(クリストファー・ノーラン監督作品など)もあります。

前半と後半のギャップ① 「設定」の定番イメージに引っ張られる

映画の前半となる「設定」がキッチリとわかりやすいものだと、見ている側もイメージを膨らませやすくなります。この自分で作り上げたイメージから大きく外れる「展開」さらには「解決」に至ると、そこに大きなギャップが生まれます。

例えば映画『パーフェクト・ゲッタウェイ』 
ハワイに新婚旅行に訪れたカップルが謎の連続殺人事件に巻き込まれるという「設定」で、主演はミラ・ジョヴォヴィッチ。

ハワイ、新婚旅行、連続殺人、ミラ・ジョヴォヴィッチ、ということから、こんな話かな、という勝手な想像をしてしまいましたがー。 <ネタバレ禁です。ぜひ本編でご確認を>


映画『幸福なラザロ』もそう。
イタリアの小さな田舎町に暮らすラザロ。貧しい村の中でも最下層のラザロですが、とにかく純朴。フェリーニの『道』のジェルソミーナ系。この村である事件が発生しー。
 
貧しくも純粋な青年が村人たちによって虐げられる不幸展開かしら……、と思っていたら、あらビックリ!<こちらもネタバレ禁です>

あまり事前情報を入れず、序盤から深読みし過ぎないように映画を見る私は、作り手側の術中にハマりやすいのでしょう。

で、前半と後半の”意図された”ギャップに心を打たれることもあれば、ただただ、クソがっ! クソがっ!となることもあるわけです。

前半と後半のギャップ②  「設定」が巧み過ぎる

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一方、「設定」そのものが巧みな映画も、前半と後半にギャップが生じやすい傾向があります。

例えば映画『パラサイト  半地下の家族』-写真
半地下に棲む妙にバイタリティのある家族の「設定」や、その面々がセレブ一家にパラサイトしていく「展開」にかなりワクワクしたものの、後半のホラー展開にはちょっと違和感が……。

映画『ゲット・アウト』もこのパターン。黒人男性が白人の恋人宅に招かれてー、という「設定」と序盤の「展開」がオモシロすぎて期待値どんどん上がっていくのに、後半なぜかB級感! 

SFや近未来設定で世界観を広げ過ぎて収拾がつかなくなるパターンとか、急に失速するパターンとか、まさかの夢オチとかー。もちろん好みはありますが、私が「前半は良かったのにー」「設定はよかったのにー」となりがちなのは、このパターンの映画です。

前半と後半のギャップ③ 「設定」がわかりにくい

厄介なのがコレ。時代や場所、登場人物の背景があえて不明確にしてあったり、過去と現在を行き来しながら描かれていたり、見ているうちに「展開」とともに「設定」が見えてくるパターンです。

このパターンの映画は、前半がけっこう退屈なものが多いんですよね。
ですが、「展開」とともに「設定」が見えてきてからが俄然面白くなる。混沌としていたストーリーや人物、セリフ、風景までもが、急に意味あるものとして立ち上がってくるんですから。

映画『ホテル・エルロワイヤル』はそんな映画です。
サビれたホテル・エルロワイヤルに集まった素性のわからない面々。前半はモヤッとしっぱなし。が!彼らの背景とホテル自体に仕込まれた謎が明らかになる中盤の「展開」~「解決」までが息をのむほどカッコイイ!

全部がこうだったらいいんですが、中には「設定」がわかりにくいままで終了したり、わかったものの「なんやソレ!」となる映画も。

まとめ

自分でもモヤッとしていた映画の前半と後半のギャップ。あらためてギャップがあるから良い映画、好きな映画というわけでもなく、良からぬ違和感だけが残る映画もあるな、と思いました。

今後も、できるだけ前情報を入れずフラットな気持ちで映画を見て、ギャップに唸ったり、モヤったりしていきたい。 以上です。

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