映画タイトル:ファーゴ
原題:FARGO
製作年:1996年 アメリカ
監督:ジョエル・コーエン イーサン・コーエン
映画『ファーゴ』は、
カーディーラーの男が借金返済のために自分の妻を誘拐し、義父から身代金をだまし取ろうと計画。ここから連鎖的に起こる惨劇を描いた映画です。
舞台はミネソタ州ミネアポリス。雪景色とそのなかに立つ伝説上の巨人ポール・バニヤンの像が象徴的なこの作品は、コーエン兄弟の代表傑作のひとつ。アカデミー賞7部門にもノミネートされ、脚本賞と主演女優賞(フランシス・マクドーマンド)を受賞しています。
キャスト
・フランシス・マクドーマンド(マージ)
一連の事件を捜査する女性警察署長 妊娠7か月
・スティーヴ・ブシェミ(カール)
誘拐の実行犯の一人
・ピーター・ストーメア(ゲア)
もう一人の実行犯
・ウィリアム・H・メイシー(ジェリー・ランディガード)
事件の発端となるカーディーラー
映画『ファーゴ』の見どころと感想
(*ちょっとネタバレありです)
MICHAELTACKETT/WORKINGTITLE/POLYGRAM/TheKobalCollection/WireImage.com
多額の謝金に苦しむジェリーはオーナーの娘である自分の妻を狂言誘拐し、身代金をだまし取ろうと考えます。2人のチンピラ(カールとゲア)に誘拐を依頼しますが、この実行犯の2人は妻を誘拐した後、パトロール中の警官に職務質問され、てんぱって警官を射殺。
さらにたまたま通りかかった目撃者を追走して射殺します。誘拐犯の2人は結果、殺人犯になってしまいジェリーにとっても予想外の展開に。
これがもとで次から次へと負の連鎖を起こしてきます。
評)「善と悪」も「生と死」も、対極ではなく隣り合わせ
コーエン兄弟お得意の「どんどん悪いほうに転がっていく話」です。
ジェリーやカール、ゲアらの短絡的で自己中の行動が、見事なまでに醜く描かれています。一方、事件を追うのは女性警察署長のマージ。妊娠7か月の大きなお腹を抱えて奮闘しますが、どこか飄々としたしゃべりと動き。
この普通のヒーロー像とは程遠いマージの存在が、残虐でトンデモない事件に癒しとリアリティをもたらしています。ラストでマージに「人生はもっと価値あるものなのにー」と言わせるあたりは、コーエン兄弟ならではの皮肉なのでしょうか。
「欲」は行動の原動力にもなるし、もっともその人らしさを映し出すものですが、人生の価値にはつながらない「欲」もたくさんあります。いや、むしろ「欲」の本質って「価値」にはつながらないことのなのかもしれません。
映画『スリー・ビルボード』(2018年・マーティン・マクドナー監督)で見事オスカーを受賞した主演のフランシス・マクドーマンド。
『スリー・ビルボード』では娘を誘拐される母親を演じていますが、出演依頼を受ける際に初産年齢が38歳になる設定に納得できず、娘ではなく孫の設定でーと申し出たそう。が、結局「監督の言う通りになさい」という夫(ジョエル)の助言で「38歳で初産」という設定で出演したそうです。
この『ファーゴ』も高齢出産の設定。警察署長でもあるからそれなりの年齢です。なのにあえて「妊婦」にした意図がマージのラストの言葉にあるのかも。
「善と悪」も「生と死」も、対極ではなく実は隣り合わせと思えてくる映画『ファーゴ』。おすすめです。
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