映画タイトル:ウディ・アレンの重罪と軽罪
原題:crimes and misdemeanors
製作年:1989年 アメリカ
監督:ウディ・アレン
◆映画『ウディ・アレンの重罪と軽罪』は、
成功者と挫折者、それぞれの人生が微妙に交錯しながら進んでいく人間ドラマです。「重罪と軽罪」というタイトルどおり、大きな罪と小さな罪の結末に、ウディ・アレンならでは思想とアイロニーが込められた作品です。
◆キャスト
・ウディ・アレン(クリフ)
売れないドキュメンタリー映画作家。
製作助手のハリーにご執心で、妻とはうまくいっていない。
・マーティン・ランドー(ジュダー)
成功した眼科医。
付き合いが長くなった愛人ドロレスから、妻との離婚を迫られている。
・アラン・アルダ(レスター)
辣腕TVディレクター。
クリフの妻ウェンディの兄。ハリーを狙っている。
・ミア・ファロー(ハリー)
映画の製作助手。クリフの好意に気づいてはいるが、仕事のためロンドンに渡る。
・アンジェリカ・ヒューストン(ドロレス)
ジュダーの愛人。
◆映画『ウディ・アレンの重罪と軽罪』の見どころと感想
(*ネタバレありです)
-OrionPictures/Photofest/ゲッティイメージズ
映画作家のクリフは知的な製作助手のハリーに引かれていますが、なかなか思いを伝えられずにいます。
一方、愛人ドロレスから「妻と離婚しなければ財団の資金流用をバラすわよ」と脅迫され、窮地に立たされる眼科医のジュダー。ジュダーは半グレの弟に相談したところ「チンピラを雇って始末するよ」と。
クリフは妹の夫であるレスターから、自身のドキュメンタリー映画を撮ってほしいと依頼されます。しかし、レスターのことを快く思っていないクリフは仕事に身が入らず、夫婦関係もうまくいかない。クリフの関心はハリーだけ。しかし、そのハリーが1年間ロンドンに渡ることになります。
一方、ジュダーの愛人は殺し屋によって殺害されますが、事件は迷宮入り。
1年後、ジュダーの患者であり、クリフの妻の兄であるベンの娘の結婚式で初対面となるクリフとジュダー。2人はそれぞれの人生を語るともなく語りはじめー。
人生のすべてが思うようにいかないクリフと、社会的に成功をおさめたジュダー。2人には直接の接点はなく、それぞれの人間関係が複雑に交錯するように物語は進んでいきます。
挫折者クリフの周りには、調子のいいレスターやそのレスターにあっさりなびいてしまうハリーなど、人生をうまく渡っていく人ばかりです。そして愛人の始末という大きな罪を抱えているはずのジュダーさえも罰せられることなくー。
ウディ・アレンらしい不条理感あふれる映画です。
このレビューを書いているのは、2018年1月です。
今、ウディ・アレンはミア・ファローとの間(二人は結婚はしていませんでした)に迎えた養女への性的虐待疑惑によって、かつてウディ・アレン作品に出演した俳優からも「出演したことを後悔してる」と言われています。
このような疑惑は今回が初めてではなく、ミア・ファローの養女(今回の件とは別の女性です)に手を出し、のちに結婚し、このこと(だけじゃないと思いますが……)がもとで、ミア・ファローとは破局後、ドロドロにー。
社会的な罪と個人的な罪は必ずしも一致しない、人生は不条理だらけ。
ウディ・アレンの映画には、こうしたテーマがよく取り上げられていますが、中でもこの『重罪と軽罪』は、それが色濃く描かれた作品といえるでしょう。