映画タイトル:ブラッドシンプル ザ・スリラー
原題:Blood Simple.
製作年:1999年 アメリカ
監督:ジョエル・コーエン イーサン・コーエン
映画『ブラッドシンプル ザ・スリラー』は、
テキサスの片田舎を舞台に妻の浮気を疑ったことから起こる殺人事件を描いたクライム・ミステリーです。
コーエン兄弟の1984年のデビュー作を再編集し、いかにも何かコーエン兄弟らしい仕掛けがありそうな冒頭の解説シーンを加えたディレクターズ・カット版です。
キャスト
・フランシス・マクドーマンド (アビー)
ジュリアンの妻
・ダン・ヘダヤ (ジュリアン・マーティ)
酒場の経営者
・ジョン・ゲッツ(レイ)
酒場の従業員 アビーの浮気相手
・M・エメット・ウォルシュ(ローレン・フィッセル)
私立探偵
映画『ブラッドシンプル ザ・スリラー』の見どころと感想
(*ちょっとネタバレありです)
舞台はテキサス州の某街。
酒場「ネオン・ブーツ」を経営するジュリアンは、気性が荒く妻にも従業員にも嫌われる存在。
ジュリアンは妻アビーと従業員のレイとの浮気を疑い私立探偵ローレン・フィッセルに調査を依頼します。
後日、浮気の証拠写真を見せられたジュリアンは激怒。アビーを問い詰めますが想像以上の反撃に危機を感じたジュリアンは、ローレンに2人の殺害を依頼します。
一旦は依頼を受けるローレンですが、殺害実行を偽装し、逆にジュリアンから依頼金をせしめジュリアンを始末することを思いつきます。
数日後、ローレンは偽の殺害証拠写真を持って酒場の事務所を訪ねジュリアン銃撃し金を強奪し逃走。そのあと事務所にやってきたレイは、アビーの仕業と思いこみジュリアンの死体を始末します。アビーもまた、レイが事務所を荒らし金を奪ったのではないかと疑います。
一方、ローレンは犯行現場に愛用のライターを置き忘れたこと気づき、発覚を恐れアビーとレイを殺そうとしますがー。
評)コーエン兄弟の”不条理な暴力”の原点
4人の登場人物のシンプルでありながら、疑心や誤解、裏切り、そして殺意までもが交錯する不条理な世界。コーエン兄弟はこの映画以降、繰り返しこのテーマで作品を作り続けています。
ふつうの人が陥ってしまう不条理な世界を、こだわりのカットと音楽で描いたこの映画の最も印象的なシーンと言えば、終盤の壁ごしの銃撃のシーンでしょう。事態がよく掴めていないアビーの言いようのない不安ー。このフランシス・マクドーマンドの表情はさすがです。
細かなディテールも見逃せません。ローレンがアビーらの殺害を偽装する間、魚釣りに行っていたジュリアンが土産として見せる紐で繋がれた4匹の魚は4人の錯綜を表しているのでしょう。
レイが引っ越しするときの荷作りの箱は、日本の清酒「月桂冠」 これもおそらく何か意図があるのでしょう(わかりませんっ!)。
で、問題の冒頭の解説シーンです。「この映画は退屈なシーンをカットして再編集しました。傑作なのできちんと保存しなければ、云々ー」というようなことが、もっともらしく語られるわけです。
もちろんこれはウソ、というかコーエン兄弟ならではの仕掛けです。
この世はすべてまやかし、虚構である。やり直したところで何も変わりはしないー。
再編集をどう見るか、新旧比較した特典映像もぜひお楽しみください。