『一九八四年』ジョージ・オーウェル コロナ禍の「今」が見える

本と読書

このところ、あちらこちらで目にする小説『一九八四年』

1949年にジョージ・オーウェルによって書かれたこの小説は、全体主義に覆われた近未来(1984年)の社会を描いています。

「まるでオーウェルの1984の世界だ」とか「ビッグ・ブラザーのようなー」と形容されるコロナ禍の今、『一九八四年』が映し出す世界とはー。

 

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『一九八四年』のザックリとしたあらすじ

第3次世界大戦後、3つの大国(オセアニア/ユーラシア/イースタシア)に分裂し、それぞれに核武装した世界が舞台です。

主人公のウィルストン・スミスは、ロンドンで真理省記録局に勤務する党員で、その仕事は不都合な過去の歴史を改ざんすること。
が、ウィルストンはビッグ・ブラザーによって支配された社会に不満を持っており、ひそかに日記にその思いを綴っています。

ジュリアという女性との出会いをきっかけに、反政府活動を開始するウィルソン。
秘密結社の一員と名乗る党中枢の官僚オブライエンに接触し、反体制派のエマニュエル・ゴールドスタインが書いた禁書『寡頭制集産主義の理論と実践』を手にしますがー。

 

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『一九八四年』とコロナ禍の今

この小説の世界はもちろん仮想なんですが、現実にありそうな、いや既に実在するものや状況を描いています。

たとえば「テレスクリーン」。これは党によるプロバガンダ放送に加え、テレスクリーンの前にいる人を監視できる装置です。街中や党員の家にあり、ウィルストンはテレスクリーンの死角を意識しながら行動しています。現代の監視カメラに相当するもので、小説の世界では監視カメラに盗聴機能が加わり、防犯以外の目的で使用されているのです。

「ニュースピーク」というのは、国(オセアニア)によって作られた新しい英語です。
なぜ「ニュースピーク」が作られたのか、それは、従来の言葉(オールドスピーク)から不都合な意味を排除し、語彙自体も大幅に削減することで歴史を改ざんし、国民の思想をコントロールしようとしたためです。

そして過去の歴史、記録を改ざんする「党(国)」の仕事。
党(国)が自分たちの都合に合わせて現在を変えてしまうため、それとつじつまを合わせるために過去の記録を書き換えたり抹消したりしなければならないのです。

 

これはまるで、今の社会のよう。

新型コロナの感染不安は、互いが監視し合う社会を作り出しました。

また「クラスター」「オーバーシュート」「ソーシャルディスタンス」といった言葉は、コロナに関連した言葉として認識され、従来使われてきた意味を失いつつあります。

横文字言葉だけではありません。

「自粛」という言葉は、もはや「自らー」の意味を失い、他者に要請されたり解除されたりする意味の言葉になりました。「ニュースピーク」の編纂のように、現実の辞書も書き換えられているかもー。

 

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<注:ここからラストに関するネタバレがあります>

小説のラストは、ビッグ・ブラザーによる支配体制が続くことを示唆しています。

『戦争は平和なり/自由は隷従なり/無知は力なり』のイデオロギーのもと、人は互いを監視し、スパイ団と呼ばれる子どもたちは自身の親をも告発するー、信じるのは家族や友人ではなく、党であり、その象徴的存在であるビッグ・ブラザー。

この小説が書かれた1949年は、第2次世界大戦後、米ソの冷戦が激化し始めた頃。
世界に広がり始めた共産主義と「反共」が対立し、ロシアではスターリン(ビッグ・ブラザーのモデル)による独裁体制が続いていました。一部の人々は全体主義や権威主義こそが社会を律するものと信じていた時代です。

が、オーウェルは全体主義社会に対する反対の姿勢を示しています。

本編の後には『ニュースピークの諸原理』という書き手不明(という設定の)解説文があります。

その文章が過去形のオールドスピークで書かれていることから「ニュースピースは衰退した」、つまり「ビッグ・ブラザーによる支配体制が破られた」ことを意味すると解釈されています。

 

コロナ禍で見えてきた「新しい支配」への警鐘としておすすめの1冊です。

 

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